Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A) (ページ15)

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Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A)１５ページ15

中身が半分以下になった缶を揺らすと、ちゃぷんと軽い音がした。
吹き抜けた夜風が、頬に心地良い。

『阿部ちゃんの気持ちを軽く見てるとか、そういうことじゃないけど。
　……意外と、受け入れられてるな、とか、さ。』

そう聞いてきた目黒の気まずそうな表情から
意外と別れても平気だったのでは、という意味合いの問いだったのだろう、と推察する。

ある種、平気といえば平気だった、のかもしれない。
Aのいなくなった日常とどう付き合えば
仕事をこなし、健康を崩さず
これまでの日常と似た日々を過ごせるのか、
あの痛みを感じずに生きていけるか、
既に、阿部は分かっている。

あの日を、Aを思い出す時間を極力減らして
考えることを放棄して
ただ、ぼんやりと生きていれば
それなりに、日常をこなせている。

逆に言えば、Aのことを考える時
彼女を思い出す時。

まさに、今この時。
未だに、胸が痛くて、くるしい。

Aの姿を最後に見てから
もう１ヶ月、まだ１ヶ月。

こんなに会わないのは
彼女と出会ってからは初めてで
Aの声が聞きたくて仕方がない。
Aの笑顔が見たいのに。
Aに触れて、体温を感じたいのに。

でも、そう思っているのは
彼女の存在を恋しく思っているのは
２人でいる時間を恋しく思っているのは
自分だけなのだと思うと
また、きしりと胸が痛む。

ぽたぽたと、頬を濡らして落ちた涙の跡を
夜風が拭うと、ひんやりとした。

頭上に輝く月と金星を見上げても
涙で滲んでしまって、もうきれいには見えない。

これから何度、こんな夜を過ごせば
Aの居ない１日を何度繰り返せば
この痛みを感じなくなる日が来るのだろう。

もし、そんな日がいつか来たら
自分は、また他の誰かに恋をして
同じように恋心に混じり始める、
名前の分からない何かの正体に悩むのだろうか。

「それは、なんか、いやだな…。」

思わず溢した呟きは、掠れている。

例え、A以外の誰かとでも
この名前の分からない何かの正体に
辿り着くのだとしても
この何かの名前を知れるのなら Aと一緒に知りたい。

Aとでないと、嫌だ。