Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A) (ページ14)

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Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A)１４ページ14

ベランダから空を見上げながら
缶酎ハイに口を付ける。
酔いたいわけでは無いから、チビチビと。

淡い色合いをした缶酎ハイは
Aが好んでよく飲んでいたもので
彼女の家に常備されていたソレを
アルコールにこだわりの無い自分も飲む内に
気付けば、1人で飲む時もコレを買っている。

甘い味の後にアルコール独特の苦味がくる。

夜空と呼ぶには少し早い、濃紺色の空には
既に月と金星が輝いている。

絵本のイラストのように鮮やかなコントラストは Aが好きそうな風景で
写真を撮ったら喜んでくれるかな、と
無意識にスマホに伸びた手を途中で下ろした。

『阿部ちゃんとゆきこさん、長かったから。
　急に関係終わりにしましょって言われたら
　好きな人じゃなくても悲しいし、辛いし、
　嫌だって思うんじゃない？』

あの日、岩本に問われたことを考える。

岩本の言うように
単に長い間一緒に居た人が、自分から離れたことに
自分はショックを受けただけなのだろうか。

自分に問うてみれば
違うと反発する気持ちが、確かにある。

別れたあの日も
恋愛対象としてAを好きだったかと言われたら、
好きだったし、今もそうだと思う。
ただ、この気持ちの全てが恋情ではない。

付き合いたての頃には確かになかった、
何かが混じっている。

この何かが、難しい。
Aにしか抱いたことのない感情だから
この何かを定義する言葉を、阿部はまだ知らない。

家族といる時とは、少し違う安心感と、心地良さ。
一緒に居るのが当たり前で
どんな自分も受け入れてもらえるという
信頼のようなものがあって
大切にしたい、大切にしていきたいと願う何かは
Aだけが自分にくれる何かで
Aと自分が、大切に作り上げた何かで。

だから、この先、この何かが
恋心に全てすり替わることがあるのか、
すり替わった時に、自分が同じ問いにどう答えを出すかは
今の阿部には分からない。