ヴァンパイアに恋しちゃいました【M!LK】④ (ページ46)

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切先はサーノリアの体をかすめ、マリーの兄はそのままの勢いで地面に倒れこむ。
それでも、もう一度剣を握り直し、サーノリアに向かってその切先を向けた。

兄「お前らヴァンパイアのせいで、俺達人間はあんなにも苦しんだんだ！！
お前らのせいで……お前らのせいで！！これで終わりにしてやる！！」

マリー「違うわ兄さん！！
人間がヴァンパイアを苦しめてるのよ！！
彼らだって生き物なのよ？！
ただ生きていたいだけなの！！
それなのにどうして兄さんたちは彼らを殺してしまうの？！」

兄「こいつらは人間を襲って生きているんだぞ？！
それだけで殺す理由には十分なはずだ！！」

マリー「そんなのおかしいわ！！
なら、人間は何をしても良いって言うの？！
人間だって生きていくために多くの命を奪っているのよ？！」

兄「そうやってヴァンパイアの都合のいいように心を操られているんだな、マリー。可哀想に……。
今すぐ俺がお前を解放してやるからな！」

マリー「兄さんこそ人間の都合のいいように肝心なところは聞いてないじゃない！！」

兄「大丈夫だ！俺が、お前を救ってやるから！！」

マリー「やめてって言ってるじゃない！！」

剣を振り上げる兄の腕を掴み、マリーは必死に彼を止めようとした。
兄にも、分かってほしかった。
どこにも、悪意など存在しないという、ただそれだけのことを。

目の前で繰り広げられる兄妹の争いに、サーノリアはどうすればいいのか、何もわからなかった。
一体何が正しくて何が間違っているのか。
人間を信じていいのか、人間を愛していいのか。
自分の、ヴァンパイアの存在とは何なのか、王である彼にも、そんなことはわからない。

サーノリア「もう、もうやめてくれマリー……。
俺の為に、お前が傷つくことはないんだ……。
俺が死ねば、それで……」

マリー「何を言ってるのよサーノリア……！！
そんなこと言わないで……！」

一瞬の隙が生まれ、兄は妹の腕を振り払い、その足を踏み出してヴァンパイアめがけて剣を振るう。
未熟なその剣は、避けること自体容易い。
けれども、サーノリアはもうよけることはしない。
仲間をすべて失った彼には、避ける気力がない。

勢いの付いたその切先はもう止められない。
まっすぐに、サーノリアの心臓めがけて、突き進んでいく。

そして――――
　