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窓から見える満月を見つめながら、勇斗さんは私の部屋の椅子に腰かけていた。
何か思いにふけるような、過去を思い返すような、そんな表情で。
A「何考えてたんですか……？」
勇斗「A……。塩丸大福は……？」
A「太智なら、ちょっと落ち着いて、今さっき家に帰っていきました。
説得できたかは分かりませんけど……」
勇斗「そっか……。あいつには悪いことしたな……」
A「腕、大丈夫ですか……？
今すぐ手当てしますね……」
救急箱から消毒液と包帯を取り出し、勇斗さんの腕にできた傷跡の手当てをはじめた。
銀の剣で刺された腕の傷口は今もなお痛々しい傷跡を残し、血がポタポタと垂れている。
勇斗「ありがと……A……」
A「それより、さっきはどうしちゃったんですか……？
あんなこと言うなんて……」
勇斗「あれは……」
A「まるで昔に家族以上に大切な人を失っちゃったような……」
勇斗「…………」
A「もしかして……勇斗さんにもそんな人がいたんですか……？
とっても、大切な誰かが……」
勇斗「いたよ……。とっても、大切な、人が…………」
A「そ、そうなんですか……。あんまり、聞かない方が良いですか……？」
勇斗「いや……Aになら……話してもいいかな……。その人の、話……」
A「いいんですか……？」
勇斗「あぁ……」
A「その人って、どんな方だったんですか……？ヴァンパイアさん……？」
勇斗「ううん……。その人は、Aと同じ……人間だった……。彼女は、
俺が初めて愛した人間だった――――」
――――
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作者名：milkssss | 作成日時：2021年2月20日 16時
