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にゃんが三十四匹 ページ34





「じゃあ、行ってくるね」


靴を履きながら、振り向いて言えば、千寿郎くんはいつものように眉を下げて優しく笑う。



「お気をつけて」


私は首を伸ばして、部屋の奥を見る。


「杏寿郎さんはどうしたのかな……」



少し前までは千寿郎くんと一緒に、行ってらっしゃい、と言ってくれていたのに。


「Aさん、電車に遅れてしまいますよ」
「あっ、そうだね。じゃあ行ってくる!千寿郎くん、水には気をつけてね」
「はい」





***





最近、帰りが遅くなりつつあった。
今日も電車から降りた時には日付が変わっていた。


「……眠い…」


欠伸をしながら、駅から出ると、目立つ髪色が見えて、固まる。



「えっ…?」


彼はゆっくり腰を上げて、こちらに向かってきた。
今何時だと思うの?
いったい何時から彼はここで待っていたのだろう。



「A、おかえり」
「っ、杏寿郎さん」



見上げれば、杏寿郎さんは目を細めて、私の髪をそっと撫でる為、動揺してしまう。
彼の思考が全く読めない。



「遅くなるから先に寝ていてと、千寿郎くんにメールを送ったはず……なんだけどなぁ…」
「千寿郎は寝ている」



そうではなくて。


「杏寿郎さん、体がこんなに冷えて…いったい何時からここで待っていたのですか?」
「大して待っていない」



ふいっ、と私から顔を逸らす杏寿郎さん。
目も絶対に私と合わせようとしない。



「こんな夜遅くに女性一人で帰るなど危ないだろう…襲われでもしたらどうするつもりだ」
「今までそうしてきましたし、大丈夫ですよ」
「何が、大丈夫だ…!!」



グッと手首を掴まれ、私は杏寿郎さんの顔を見た。
彼は目を見開き、少し怒っているようだった。
しかし、ハッと気付くと、悲しそうに少し眉を下げて、視線を下にずらしていた。
しかし手首が離されることは無かった。



「…君が傷つく姿は見たくない」



そう言われ、心がじわりと熱くなった。
たまらなく愛おしくて、抱きしめたくて。



「杏寿郎さん、大好きですよ」
「むっ…!!」



彼は耳まで真っ赤になって、私の手首を掴む力が強くなった。


「友人として、これからもよろしくお願いしますね!」
「ゆ、うじん…」


一瞬彼は酷く傷ついていた様子だった。
でもこれでいい。



私達はいつか必ず別れが来る。
きっとここで線を引かなければ、別れが来た時に笑顔で送り出す事なんてできなくなるだろうから。

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(プロフ) - グミさん» わぁぁ!!グミさま〜!!お優しいコメントをありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。グミさまの心を少しでもホワホワさせることができたのなら幸いです!こちらこそ長い間お付き合い下さりありがとうございました!<(_ _*)> (1月30日 11時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
グミ - 途中まで読んでいて、でも忙しくて全然読めてなかったのですが、ちらっと除くと完結、と出ていたので一気読みしてしまいました!2人と別れる時、涙が溢れてきました。でも!再会できて良かったです!!しあわせになって、良かった…!コメント失礼しましたm(*_ _)m (1月30日 6時) (レス) @page50 id: 9cb77040e4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - maxiahさん» お久しぶりです!maxiah様!(*´∇`)心が浄化されましたか!それは光栄の極みです!!長い間おやすみしていたのにも関わらずお優しいお言葉胸にしみます(*/-\*)素敵なコメントをありがとうございました!m(_ _)m (2022年4月7日 17時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
maxiah(プロフ) - お久しぶりに拝見させていただきました。はぁ心が浄化されます。好きです。 (2022年4月6日 22時) (レス) @page37 id: f2fb6597c0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 墨染さん» わぁぁ!墨染さまっ!こんばんは!こちらこそ、墨染さまとお話する時は安らぎの一時です!いつもありがとうございますm(_ _)mこれからも、墨染さまを幸せにできるようなお話作りを頑張ります…!(*´▽`*) (2021年7月6日 22時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年1月23日 17時

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