炎の狂った愛を受け止めて。弐

ななじゅうさん＊ ページ23

「A、出てきなさい」




コンコンとノックの音が響く。
私は鍵の部分をしっかりと押さえ、呟く。




「怒らないでください…杏寿郎さん…私…本当に…」
「君次第だな。早く出てきなさい」
「ごめんなさい…本当に…私を信じてください」



何度も言い続けて数分後。








「信じているさ。もちろん。君の事は信じてる。怒らないから、出ておいで」


優しい声が扉の向こうから響き、私はゆっくり、鍵を外し、扉を開ける。




「杏＿＿＿＿っ！！？」





開けた瞬間、勢いよく腕を引かれ、その場で組み敷かれた。
まずい、と思ってももう遅い。




「やましい事があったから、いつもと違ってトイレに隠れたんだろう？そうだろう？」
「違います…そんな事…」
「今日の服は…そうだな。ここが、開けたワンピースだったんじゃないのか？」



胸元の襟の部分に指を掛けられ、引っ張られる。
ボタンが何とか、頑張ってくれているが、直ぐに外れて、胸元が顕になった。






「こんなにイヤらしい格好をして外に出た、そうだろう？」
「違います！！こんなに胸元晒してません！…酷いです…杏寿郎さん…なんでそんなに…」




両腕はしっかりと押さえられているため、
杏寿郎さんから顔を背けて精一杯の抵抗をした。



「A」
「…」
「こっちを向くんだ」
「嫌です…」
「……あぁ、分かっている。君はそんな事しないし、俺を想ってくれているのも分かっているさ」




杏寿郎さんはネクタイを緩めて、目を細めた。




「…嫉妬が止まらない。君への執着が抑えられない。ずっとずっと心配で。Aが俺から離れてしまうのが死より恐ろしい」
「杏寿郎さん…」
「A…もうこんな俺は嫌か？嫌いか？怖いか？俺は君を縛り続けなければ安心できない」





彼の瞳は絶望の色をしていた。
杏寿郎さんはいつだって不安定なのかもしれない。



「私は杏寿郎さんを愛しています。何度でも言います。愛しています」
「…なら、いいだろう？受け止めて欲しい…もう嫉妬で狂いそうだ。あぁ、もちろん君は何も悪くない。…俺が弱いだけだ」





ボロボロと涙を流すその姿は誰もが見惚れるだろう。
だけど、私は胸が張り裂けそうだった。
なんで、私は彼を助けられないのだろう。
彼を救い出す方法が分からない。
かと言って、痛みを毎日我慢なんて、できやしない。



「A」



ネクタイを外し、私の両腕を縛り上げた時、杏寿郎さんは酷く安心した顔をしていた。

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