貴方を見届けさせて。

漆 ページ7

羽織を揺らしながら、煉獄さんは笑う。


「一つのことに深く集中することは簡単に真似できることでは無い。君はすごい！！」






煉獄さんは人を励ましたり、その言葉一つ一つが人を感動させる。
そうだ、漫画でも、彼はそういう人なのだ。


誰かに勇気を与え、仲間を奮い立たせ、最後はみんなを感動させる。



柱の方達はみんな、優しくて、涙が止まらなかった。
その中でも煉獄さんは柱の中でも大きな存在で、彼から沢山のベクトルが出ている。







「煉獄さんの方が人の心に感動を与える事ができる、素敵ですごい人ですよ…」




思い出したら、涙が溢れ出てきてしまった。
暗くても泣いてるのがすぐ分かるぐらいの鼻声で。


彼からしたら何故泣いているのか分からないだろう。




でも、でもね、

貴方は本当に素敵な人なの。
本当に立派な人なの。


私がこの世界に転生する前は彼は漫画の中のキャラクターだった。

だけど、今は生きているの。
私の隣にいるの。


これがどんなに大きな事か。






「……ありがとう！！君の言葉は優しく響くな！」








その後無事に送り届けられた私は煉獄さんの前で父さんの鉄拳を頭に食らった。
恥ずかしかった。



「いつまでほっつき歩いてたんだ！！馬鹿者！！」
「ごめんね、父さん！！でも、ほらほら！煉獄さんにね、あはは……」
「本当に、この間もすみませんでした！！お礼に食事でも……」




と、父さん！！
父さんは何故かウインクしてきた。


え！？







「いえ、俺はこれから任務があるので、お気になさらず！！では！！」
「煉獄さんっ！！私も任務に連れて行ってください！！」
「む！？」
「A！！何を馬鹿なことを！！」




あなたをスケッチしたいんだよ！！
鬼との戦闘を！！




「藤宮さん、それはダメだ！！」
「遠くから見るだけでも…」
「ダメだ！！」



迷惑な事、邪魔な事は分かってる……でも、時間が無い。
沢山貴方を記録に遺さないと。


貴方が消えてしまう。




「煉獄さん、これならどうでしょうか！！」



私は部屋の奥から、集めていた藤の花を持ってくる。




「これをずっと身に付けておきます！！」
「うむ！ダメだ！！」



私は父親に取り押さえられ、終わった。
ついていけなかった…！！

……もう鬼殺隊に入隊するしか、傍に居られないのか。

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