貴方を見届けさせて。

伍 ページ5

「Aさん、また絵を描いていらっしゃるのですか？」
「うん、これね、小遣い稼ぎにはいいんだよ」




定食を下げてくれる千代さんに絵を見せる。
描かれているのは男女二人が仲良く座っている絵。
私から少し離れた所に座っている男女だ。



やはり、写真はこの時代、高くつく。
そして、軽く二、三時間は動いてはいけないから、何か思い出を遺したいと思った時、私に声を掛けてくる。
私はあまり動かないでくれれば三十分、長くて一時間で描くことができ、写真のように高価ではない。紙代と鉛筆代に少し利益分を乗せたのみ。





「よし、できた！お二人さんできましたよ」
「ありがとうございます」
「私って、清さんを見つめている時って、こんな顔してるのね」



お金を受け取り、紙を渡した。
二人が店から出て行った後、千代さんが思い出したかのように口を開いた。






「Aさん、そう言えばこの間の男性、初めて見る方でしたが、お知り合いなのですか？」
「……尊敬してる人？かな？アイドル的存在？雲の上の存在？」
「あい、どる？」



不思議そうな千代さんを見て、私は笑う。





「とにかく千代さんが思ってるような関係ではないかな」



そう言えば残念そうな顔をする千代さん。
千代さんは十六の女性で、こりゃまた可愛くて、優しくて、この食堂の看板娘である。





「Aさんがあんなに楽しそうに男性の方と話されているものですから、勘違いしてしまいました」
「私は破談になる事で名高い娘ですからね、まったく。私の魅力を分からない男性はこちらから願い下げですね」





自分で言ってて少し切ない。





「Aさんが良いと言ってくださる方はきっと居ますよ！Aさんの言う、運命の人はいますよ！」
「千代さん……私が男だったら絶対、千代さんに求婚してたよ」
「ふふ、ありがとうございます」





私はお金を払い、店を出た。

あぁ、鬼殺隊をスケッチするには、どうしたらいいだろうか。
鬼殺隊と鬼との戦闘を描きたいという思いがあり、

そして、何より、




煉獄さんを描きたい。
炭治郎くんも、描きたいなぁ。

鬼滅の刃キャラをコンプリートしたいところ。
出来れば無惨様とかも、描きたいな。








ゆっくりと日は傾いていった。

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