貴方を見届けさせて。

拾参 ページ13

「ここから、飛び降りるぐらいできますよっ！！」
「無理しなくてもいいぞ？藤宮さん」






腕を広げながら、笑う煉獄さん。
だけどここで、引いたら、次に煉獄さんの戦闘シーンは書けなくなってしまう。
それは、嫌だ。






「煉獄さんっ！！」
「む？」
「行きますっ！！」
「うむ、承知したっ！！」






煉獄さんはしっかりと腕を広げて私を見つめた。
その様子を見て、私は帳面の間に鉛筆を挟んでギュッと抱きしめて、飛び降りた。


勢いよく落下していくと共に、懐に入れていた藤の花が一つ一つ取れていき、上に流れていく。







「藤が、」




手を伸ばそうとすれば、グッと、力強く抱きとめられていた。







「ふむ、根性はあるようだな！感心、感心！！」
「煉獄さん」
「む？」
「とっても勇ましくて、でも哀しさ交じる美しさもあって……とにかく素敵でした！！」
「……」







素直に感想を述べれば、煉獄さんは黙り込んだ。








「全く……藤宮さんは……」
「はい？」
「変な人だ！！」
「変な人って……！！ちょっと、煉獄少年！！」





煉獄さんに変な人って言われるの、私ぐらいしか居ないような気がする。
そんな事を考えたら、ふわりと優越感が心の中に生まれ、つい、笑ってしまった。






「本当の事だ、藤宮少女！勘違いさせるのはよろしくないぞ」
「本当の事なんですって！」






煉獄さんは笑って、私の頭を撫でる。


「え…？」



もちろんこれには戸惑ってしまう私。
しかし、煉獄さんは私の髪を見て、何回も撫でる。







「煉獄さん…？」
「あぁ、藤の花が君の髪にくっ付いているものだから…随分と大量に持ってきたのだな」
「私は煉獄さんには迷惑掛けないように心掛けていますから！」
「ははっ、なら、次は任務に同行するのはやめて欲しいところだな！」
「それは、難しいです」







煉獄さんは眉を下げて、ゆっくり私をおろした。



「絵は描けたのか？」
「…それが、煉獄さん速すぎて描けませんでした」
「そうか！」
「でもっ、焼き付けました！！目に！目を閉じれば思い出せます…あの、燃え上がる感動を…」






拳を固めれば、煉獄さんは笑う。






「君はやっぱり、変な人だ」

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