拾玖 ページ19
「私、とても煉獄さんを尊敬しているんです!!そう尊敬……尊敬しているんです!!尊敬してて、感動しちゃって…泣いちゃいました」
尊敬、という言葉を連呼した。
深く深く自分の心に刻み込んだ。
『尊敬』本当にただそれだけの事。
自分に言い聞かせ、押し込んだ。
「じゃあ!煉獄さん、今日の夜も!!任務に行かれるのでしたら、同行させてくださいっ!絶対ですよ〜!」
私は一度も振り返らずに手を振って、走り出した。
無我夢中で走った。
心のモヤを吹き飛ばしたかった。
足を止めてしまったら愚痴やら後悔やら留めなく流れ出てしまいそうだった。
ハッと気がついて顔を上げれば父さんと二人で住んでいる家の前だった。
そこで父がちょうど扉を開けて出てきた。
「お、お前…」
「父さん」
ぐちゃぐちゃの顔を見られて、気まづくて顔を逸らそうとすれば、肩を掴まれた。
「煉獄さんに泣かされたのか」
「違うよ、そうではなくて…その…自分がいかに無力か身に染みて感じただけだよ」
「どういうことだ」
そう言われて、父になんて説明すればいいか分からなかった。きっと真実を言っても信じて貰えないようなぶっ飛んだ話だ。
「少し水を浴びてくるね」
水浴びを終え、泥だらけの袴などから着替えれば少し心が落ち着いた。
「うん、頑張ろう」
鏡に向かって言った。
そう、自分自身を奮い立たせようとした。
昼は父の診療の手伝いをし、隙間時間に軽く走った。
***
「煉獄さん」
夜、あの燃え上がるような羽織を見つけ、手を振れば、煉獄さんも軽く手を上げてくれた。
「こんばんは、煉獄さん」
「あぁ、こんばんは、藤宮さん」
「今日こそはしっかり、煉獄さんの勇姿を描き残せるように頑張りますね」
「描き残してどうするつもりだ?」
煉獄さんは不思議そうに目を細める。
「『煉獄伝』とか題名付けて、後世に刻むんですよ」
「君は変な人だ」
「私が変なら煉獄さんも変です」
話しながら、流れるように煉獄さんに背負われる。
「む?俺はどこも変ではない」
「じゃあ、美男子ですね!」
「……藤宮さん」
「え?」
煉獄さん、怒ってる?
「そういうのはよろしくないと、言ったはずだが?」
「からかっていませんよ、本当___」
「藤宮さん」
「…はい」
なぜか怒られてしまった。
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古猫丸(プロフ) - 柑橘蛍さん» 柑橘蛍様!いつもコメントありがとうございます(*´ω`*)そうなんですよね!主人公ちゃんめちゃくちゃ高難度の技をやってのけているんですよ!!軽く大まかな事を描いて、後付けでじっくり描いていたのではないかな〜と思います!(*´艸`*) (2021年5月3日 6時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 完結おめでとうございます!よく考えたら主人公ちゃん静物じゃなくて動物スケッチしてるんですよね…すご。 (2021年5月3日 0時) (レス) id: e14d5de1d5 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - 華さん» 今回は珍しく兄貴切り抜け話だったので、レア中のレアです!この話も一番最初に話を練ったときは兄貴はそのまま見届けられる感じで、来世の話も無しの一番切なかったのですが、やっぱり幸せエンドにしました(*´-`*)次回作、頑張りますっ〜!(*´▽`)ノ (2021年5月2日 23時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - 彩乃(yumeko)さん» 彩乃(yumeko)さん、コメントありがとうございます!(*´∇`)旅館のシーンは他の話と比べてちょっと甘めですよね!(*´艸`*)ふふふ。こちらこそ最後まで目を通していただき、ありがとうございました!m(_ _)m (2021年5月2日 23時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 丸ちゃん、完結おめでとうございます(*´ `)最後、煉獄さんが無限列車を切り抜けて良かったと思いました!二人が幸せな結末で良かったです。次のお話も楽しみにしていますね! (2021年5月2日 22時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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