星漿体…器の少女天内理子成り代わり (ページ21)

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『ねぇ…五条…
私の為に寝ずに術式解いてないんでしょ?
ゴメンね…ありがと』

悟｢…｣

『もう短い時間しかないけど五条の為ならなんでもしてあげる
して欲しいことあったら言ってね』

悟｢んなのねーよバーカ!!｣

楽しい時間はあっという間だな…
本当にこのまま時間がとまってしまえばいいのにもっと傍にいたい…五条の傍に…

拳ひとつ分
残り10㎝、空いていた距離が詰まる

頭一つ違う高さでAは五条を見た

『五条、好きだよ』

甘い声が五条の脳を揺さぶった
サナギが美しい蝶に羽化する瞬間のように目の前の女から目を逸らせなかった

『離れたくない…ずっと一緒にいたい…
五条がいると楽しくてドキドキして輝いて気色が色づいてみえる
これが恋なんだろうな

こんなあったかい気持ちも嬉しくて苦しい気持ちなんて知らなかった
あなたのおかげ』

白い手の中で広げられた太いリボンが五条の口元に押し付けられ石鹸のような花のような少し潮のような香りがした

悟｢!!｣

『大好き…大好きだよ』

柔らかそうなAの唇が五条の口元に押し付けられた

『ありがとう
恋を教えてくれて
私が、私でなくなる最期の時まであなたに恋を抱かせて』

触れた柔い感触が離れていった

燃ゆるガーネットのような瞳が緩く弧を描き
淡い熱を切ないほどの優しさを宿して終わりを告げる口で想いを紡ぐ

悟｢…｣

五条は今まで様々な人間から想いを寄せられてきた
その意味が分からなかったし無駄だとすら思っていた

それより夏油や家入と築いた友情の方が魅力的で
こんな綺麗なものを五条は知らない
無意識に乾いた唇を舐め張り付いたように声の出ない喉で唾を呑み頷いた

もう五条の目に、Aは子供に見えなかった

それにまた花のように笑うから、この青い世界で輝いて見えて
このまま泡のように消えてしまうんじゃないかと伸ばした手は髪の一筋すら掴めずすり抜けた

『ありがと
お願いがあるの
この指輪を…母の形見を預かっててほしい』

えっ…と驚く五条

悟｢大事なやつなんだろ
そんな簡単に手放していいのかよ!!｣

『母の形見だからよ
同化するまで五条達が守ってくれるけど、なにがあるか分からない
五条達のことは信用してるし信じてるけど血で汚したくないから

それにそれは母の願いでもあるの』

悟｢…わかった｣

『ありがと
終わったら捨てていいから
じゃあみんな待ってるし行こっか』

悟｢あぁ｣

前を歩く五条の背中を見ながら大好きだから幸せになってほしいと願った