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悟「さっき、なんでボーッと水槽みてたんだ?」
『…生き物にしたら本来の場所じゃなくてかわいそうなんだろうけど、水槽のなかだけど綺麗だなって』
水族館にきたのは初めてで水槽のなかにいっぱいの魚
まるで海底の中みたいなトンネル・小指サイズみたいな小さな生き物・氷の上で生きる・イルカショー
『どれもスゴかった世界には私の知らないことが、
いっぱい…いっぱいあるんだなって思った…』
悟「ふーん…」
天真爛漫な印象の強い天内の感情ごと抜け落ちたような無表情に五条はどんな言葉をかければいいのかわからなかった
五条とて幾ら身体が大きくても強い術式を持っていても権力があったとしても、まだ高校生の子供で女の慰め方なんて知らなかった
悟「オマエさ学校では普通だったし、俺と2人の時も普通だったけどなんでそんな喋り方なの?
傑も人によって態度違ってさ…二重人格なわけ?ウケる」
何を言おうか迷って昨日から思ったことを言ってしまった
きっと学校ではこんなヘンテコな口調はしてなかったのだろう
実際、昨夜もちょいちょい言葉が崩れていたし自身の親友である夏油のように処世術のような人に対する壁のような、それはどんな人間にでも自分を貫いてしまう五条にはわからないだろうけれど
Aは焦点の合わなかった目で五条を見た
五条には天内が掴めない
無邪気かと思えば諦観を抱いていて子供っぽいかと思えばどこか妖艶で自身より年下のはずの少女がもっとずっと年上にすら見えて
『どっちも…妾じゃよ』
ぽつりと呟いた
『同化するまで気を強く持つ為ってのもあるけど
私も妾も、どちらも自分だよ
同化が嫌とかではない本心でそう思う
けど普通でありたいとも思う』
溺れているようだと思った
ゆらゆらと透ける光が白い肌の上を泳ぐ
『妾は特別、でも普通になりたいとも思う
本心からそう思う
それを言葉で表しただけじゃ』
悟「……」
『夏油も似たようなもんじゃろう
色んな本心があって、それが纏まらなくて端々にそれが出る
お前のように全てをさらけ出せる方が珍しいと思うぞ』
それは大人っぽい笑みで五条よりずっと何かを経験してきたことが滲む笑顔だった
悟「オマエ…マジよく分かんねえ」
『はは、そんな簡単にわかったら苦労せん』
下の方で毛先だけをまとめたリボンを弄り
しゅるりと解いた
『でも分かろうとしてくれるのだな
知ってる?
分からないから人は言葉を尽くすんだよ』
嬉しそうに笑う女の肩を豊かな黒髪が滑る
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作者名:卯月 | 作成日時:2021年7月16日 4時