銀髪の男 ページ5
「は、離せよっ…!!!!」
「この花魁。俺のお得意の指名相手なんだわ。
だからこれ以上危害を加えるって言うなら、俺が相手になるぜ?」
顔は笑っているのに耳に入ってきた声は
恐怖で震えるほど低い。
腕を掴まれた男は顔を青白くさせ、震え始める。
「ひ、ひっ…!!」
「反省したならとっとと帰れ。そして二度とここに立ち入るんじゃねぇ」
「くっ…!ち、ちくしょお…覚えてろ!!!」
男は情けない声でそう答えると、産まれたての子鹿のように足を震わせながらこの場を去っていった。
「ったく男がみっともねぇな。
……おい、あんた。大丈夫か?」
呆然としているわちきに手を差し出してくれた銀髪の人。
初めて見る顔に、わちきは首を傾げ
「主は…わちきと会ったことが、あるのでありんすか?」
そう尋ねた。
それはさっき、この方が……
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『この花魁。俺のお得意の指名相手なんだわ』
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そう言ったから。
だが、わちきは初めて見る顔。
矛盾する記憶に、頭は混乱する。
「……ん?あぁ、さっきの話か。
悪ぃ、あれは咄嗟に出た嘘だ
それの方があの男もすぐ引き下がるかと思ってよ」
「そ、そうでありんしたか。
……それより、助けていただき感謝いたしんす。名は―――」
「宇髄天元だ」
わちきが名前を呼ぶのに困っていると
微笑みながら自分の名前を教えてくれた宇髄殿。
「…宇髄殿。わちきはAと申しいす。改めて助けて、」
「礼はいい。俺がただ派手にイラついただけだからな」
艶のある銀色の髪をかきあげる。
その瞬間、再び甘い香りが鼻を包んだ。
「…そうとも行きませぬ。何かしらの形で礼をさせておくんなし」
関係の無い客と花魁の喧嘩に巻き込んだのに何の礼もなしで帰すのは
花魁として忍びない。
縋るように頼むわちきを見つめ、少し考える素振りを見せる宇髄殿。
「……じゃー少しだけアンタと話をさせてくれ」
顎に手を乗せ少し考えた後
わちきを指さし静かにそう告げた。
「勿論でありんす。妃代、部屋へ案内しておくんなし」
「は、はい!宇髄殿こちらです…!」
「わちきもすぐに行きなんす」
そう言い、乱れた着物を直しに宇髄殿に背を向けた。
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麗(プロフ) - 続きを読める事を楽しみにしてます! (2020年11月13日 20時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
チュロス - あーやさん» あーやさんコメントありがとうございます!感動系の物語を書けたらな、とずっと思ってたので本当に嬉しいです!!こちらこそ読んでいただきありがとうございます(泣)これからもあーやさんが泣ける様なお話書けるように頑張ります!! (2020年8月13日 3時) (レス) id: 5b28331b1d (このIDを非表示/違反報告)
あーや(プロフ) - 切ないです、、、涙腺弱いのでウルウルしながら読んでますw素敵な作品をありがとうございます!更新頑張って下さい! (2020年8月13日 2時) (レス) id: 396fc52ffc (このIDを非表示/違反報告)
チュロス - 皐月ばっふぁろーさん» 皐月ばっふぁろーさん嬉しいお言葉ありがとうございます!!超ノロマ更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 5b28331b1d (このIDを非表示/違反報告)
皐月ばっふぁろー(プロフ) - めっちゃ面白くて読み込みました!続き楽しみにしてます! (2020年7月5日 2時) (レス) id: 9e1ebe4e73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チュロス | 作成日時:2020年4月9日 22時