派手に魅せられて 【鬼滅の刃】

帯 ページ28

「誰、でありんすか…？」


周りを見渡すが小屋の中には誰もいない。

わちきは雛鶴殿から離れ小屋の入り口から外を見る。だが鳥1匹すら見当たらない。



今の声は一体……



「Aさん逃げて！！！」


背後から急に雛鶴殿の悲鳴のような声が響いた。

わちきが後ろを振り返ると



「…ひ、雛鶴殿…！」


何故か雛鶴殿が壁に張り付けにされていた。
長く鮮やかな色をした帯がまるで蚯蚓のようにくねくねと動きながら雛鶴殿の体に纏わりついている。


今の状況を飲み込めず、わちきはその場で立ち尽くす事しか出来ない。


「お願い、Aさん逃げ…」


「あらら…どっちも逃がさないって言ってるじゃないのぉ」


再び聞こえたしゃがれた声。
月明かりに照らされた帯をよく見ると、帯には唇の飾りのようなモノがまるで人間の口のように動いていた。


つまり、この帯がしゃがれた声を出しているのだ。



「…あ、あぁ…」



気味の悪い喋る帯。
理解が追いつかず、恐怖で膝から崩れ落ちる。


「大丈夫、ちゃんと私が綺麗に食べてあげる」


食べる？何を？


「う、うぅ…」


帯に体を締め付けられ、雛鶴殿は苦しそうに顔を歪める。


この得体の知れない帯は、間違いなく雛鶴殿を殺す気だ。

助けなければ。
今わちきが助けなければ…もう二度と雛鶴殿は宇髄殿に会えなくなってしまう…。


「……雛鶴殿を、雛鶴殿を離しなんし…！」


片手に簪を握りしめると、帯目掛けて振り下ろした。



バシッ！



「…あっ、う…」


スルンッ、と難なく交わされると帯はわちきを弾き飛ばす。



「そんな小道具痛くも痒くもないわよぉ」



わちきは床を這いながら帯に近づき再び簪を振り下ろす。


「Aさん！やめて！！」



雛鶴殿、頑張っておくんなし。


主には生きなければならない理由があるのでありんす。
主は生きて再び宇髄殿と会って、幸せになるべきなのでありんす。



こんな薄汚い小屋で一生を終える者など、わちきのような醜い花魁だけで良いのです。


だから、だから…



「その方を、殺さないでおくんなし…殺すならわちきだけを……」


「Aさん何を…！！」


「ほぉ、そんなに死にたいなら先に取り込んであげる」



雛鶴殿に纏わりついていた帯はいとも簡単に雛鶴殿から離れ、わちきの体に纏わり始めた。


気持ち悪い。
ただそれだけが頭の中に思い浮かんだが、我慢する事は慣れている。

唇を噛み締めジッ、と堪えた。


「Aさぁん！！！」

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