派手に魅せられて 【鬼滅の刃】

蘇る記憶 ページ11

「…ん、」


重い瞼を開け、眩しい光に目を細める。


慣れた自分の部屋の匂い。
見慣れた天井。
温かい毛布。


いつも通りの朝、なはずなのに
違和感がわちきを襲う。




「A花魁！！！」

「妃代…」


凄い勢いで抱きついてきた涙目の妃代。


「あちき、心配したんでやんす…うぅ……！」


心配？

何故、妃代は泣いているのだ？


「起きたのね、おはよう。体調はどう？」


透き通るような綺麗な声。

ふと横を見れば、襖と襖の間から
鯉夏花魁が此方を覗き込んでいた。


「…久しぶりでありんす…鯉夏花魁」

「寂しいわね、普通に呼んでくれていいのよ。昔みたいに」


わちきの隣に来て、目を細めながら綺麗な笑顔を浮かべる。

昔と変わらない綺麗な笑顔に
自然と頬が緩んだ。



「体調はどう？」

「特に変わりないでありんす…」


何故か右半身と頬がズキズキと痛むが
別に言うほどの事でもない。


「昨日の事、覚えてる？」

「昨日…？」


その瞬間、心臓が大きく脈を打った。



あぁ。そうか、わちきは昨日――




「…また過呼吸を」


鮮明ではないが、思い出した。


わちきは昨日。
客との最中で過呼吸を起こしたのだ。

そのせいで客を怒らせ
帰らせてしまった。

その際。怒りで我を失った客に殴られ……


そこからの記憶が無い。



「Aが部屋で倒れてるのを妃代が見つけて、私の所に助けを求めに来たのよ」

「……妃代」


未だにわちきの懐に顔を埋める妃代の頭を撫でる。
妃代の涙は、徐々にわちきの布団を濡らしていく。



「心配かけて、ごめんなし」


わちきがそう言えば切れそうなほどに
ブンブンッと首を横に振る。



「頬、客に殴られたのよね？」

「これは仕方ないでありんす。わちきの失態故に…」



金を払ったのに商品に傷がついてるなど
文句を言うのは当然の事。

今回ばかりはわちきも反省せねば。



「でも医者に診てもらった方が、」

「わちきなんかのために……お金が勿体ないでありんす」


わちきがそう言うと鯉夏花魁は悲しそうに目を伏せたが


わちきは知らぬ振りをした。


「A花魁。宇髄天元様がお呼びでございます」


外から聞こえた声に、少し心臓が跳ねた。


「今、行きなんす」

「A…！そんな体で無茶よ！」

「大丈夫でありんす。宇髄殿とは
ただ話すだけでありんすから」


わちきは鯉夏花魁と妃代の手を離し


宇髄殿の元へ歩を進めた。

痣と化粧→←狂う予定(宇髄side)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す