【炎炎ノ消防隊】番人に梔子 (ページ10)

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その玖　予感ページ10

わたくしには声がございません。
　何故なら我が身を焼いてしまうからでございます。

　しかしこの能力、実は便利でもございます。

　声を発して身を焼くならば、この身以外の場所を見つければよいことでございました。
　ですがやはりこの身を、この喉を焼いてしまうので若様には喋るなと言われてしまうのでございます。

「喋るな」

「ヤダ」

「一生喋れなくなんぞ」

「シャベラナケレバイッショウシャベラナイ」

「「紺炉ぉ」」

「まぁでも修復作業では重宝してるし、爺さんの薬があれば数日喋らなければ酷くならないけどな。でも、この前みたいにいつの間にか限界来てたら嫌だしな、今日はやめとけ、な、桜花」

［コンロがそう言うなら仕方ない］

　腕を組みながら頷く桜花。しかし紅丸は気に食わなかった。

「なんで俺の言う事は聞かねぇんだ、あ？」

［おかんの重みと言うやつですな］

「理解できる言葉で書け」

　そう言い、紅丸はその場を去った。
　桜花は不満げにトビの手伝いに回った。

「あの、手伝います」

　声を掛けたのは森羅だった。
　あの一件があったというのに彼は嫌悪もなく、声を掛けた。

［いろいろとごめんよ］

「いえ、自分が喧嘩吹っかけたり、よく考えれば民間人は連れてっちゃ駄目でしたね」

［でもありがとう。
　消防官じゃないから友人の最期を看取れないのは辛いから］

「……これ持って行きますね。俺の能力なら運搬も高所作業も出来ますから」

　パチパチと手を叩かれると森羅は少しうれしくなった。
　飛んでいった森羅を見送り、手持ち無沙汰になってしまった桜花は歩き出した。

　道行く中、第八のメンバーを見かけた。
　己の特技を活かして作業をしていた。とても心強いが、服は着てほしかった。

「桜花ちゃん、これ持ってってくんねぇか？」

「イイヨ」

　これくらいならバレないと一言発して、木材を受け取った。
　男性に比べて鍛えていない桜花は木材を生身では持って行けない。
　だか炎の扱いはお墨付きだった。

［お届け物です］

　と炎で知らせ、受け取る準備が完了するまで待つ。
　渡したら次の場所へと配達員と同じような作業を繰り返した。

「けほっ」

「大丈夫ですか？」

［大丈夫。薬飲めば治る］

「姫よ、詰め所まで護衛致しましょう」

［弱っちいから遠慮します］

　にしても喉の違和感が気になる桜花。
　合計一時間ほど声を発すると約一週間は能力が使えない。
　だから何もないことを祈るばかりだった。