外伝 四方八方行き止まり ページ36
兄妹というのは面倒なものだった。
家族だから例え他人がかっこいいと、可愛いと褒め称えようとも本当は家ではこんな姿を見ていれば、何故、という文言しか出てこない。
「酔って床食う奴のどこがいいんだ？」
「妹に容赦なく関節技きめる奴のどこがいいのさ？」
このようにお互い違和感しか感じていない。
幼い頃からずっと同じ屋根の下。
嫌な面も見てきただろう。
お互い啀み合うが助けを求めるのは、二人とも同じ人物だった。
「「紺炉ぉ」」
「俺にふらんでくだせぇ」
「先日の一件まだ許してないからな」
「なんなら一生許してやんない」
血の繋がっていないこの二人。
双子なのではないかと疑うほど息が合う。
「にしても結婚ねぇ……」
「珍しく考え込むな、桜花」
「いや私が最も結婚してほしい人間が、未だに結婚しないから謎で謎なんだよ」
「ん？まさか」
「紺炉だよ、紺炉、あ、な、た！！」
自分ではない人間が結婚してほしいのだ。
誤解しか生まない言葉の並べ方をするが、そうなるほど桜花は紺炉に結婚してほしかったのだ。
「祝言はちゃんとみんなに知らせるから安心しなよ」
「そうじゃない」
「若様には祝辞を言ってもらおう」
「まかせろ」
「まてまてまて」
「双子にはそうだね、飾り付けを頼もうか」
紺炉が焦って、止めようにも止まらず妄想は続いていく。何故か紅丸もノリノリで考え始めている。
「紅達の話はどこいったんだ……」
「いやぁ、紺炉にはとっとと女の一人や二人」
「二人もいらねぇよ……」
疲れ果てる紺炉を横目に、会場の設計図まで書き始めた。
「紅達はどーなんですか、結婚」
「「相手がいねぇのにどうやれと」」
(お前らっ……！！)
紺炉は頭を抱えた。
紅丸は恋心を抱いていても打ち明けず、桜花は自分が恋愛するもされるもあるはずがないと考えている。
四方八方行き止まりのようなものだった。
「桜花」
「ん？」
(若！今だ！！)
内心応援していた紺炉。
応援される紅丸は真剣な眼差しで言った。
「酒樽も飾ろう」
「……忘れてたわ。どこに飾る？」
「結局飲むんだ、近くていいだろ」
「んじゃ真ん中に」
呆れしかなかった。
放心状態の紺炉の目の前で手を叩き連れ戻す。
「計画は完璧」
「紺炉ぉ、いつでもいいぞ」
そう言いながら二人は紺炉の肩に手を置いた。
紺炉はとても言いたかった。
違うそうじゃない、と。
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作者名：文字変換 | 作成日時：2020年9月7日 10時
