【炎炎ノ消防隊】番人に梔子 (ページ4)

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その参　疑問ページ4

少しばかり昔話をいたしましょう。
　わたくし、新門桜花は捨て子でございました。
　野良犬のように彷徨い歩いていたわたくしを拾ってくださったのが、先代でございました。

　恵まれた生活を送っていたと思いますが、わたくしは引け目を感じておりました。
　毎日若様や紺炉と手合わせをしながらその思いは募るばかりでした。
　そんな時、わたくしは一度、あの時死んで仕舞えればよかった、と声を出しました。

　案の定、わたくしの声はこの身を焼きました。

　ですがまたまた運良く助かりました。
　助けてくださったのは若様と紺炉でございました。

　故にわたくしは二度も救われた若様達のために命を捨てるのでございます。

「何言われた」

　なぜでしょう。なぜか若様が玄関で仁王立ちしているのでございます。

［コンロ！！］

「悪いが今回は止められない」

　紺炉の後ろには何故か大量の花束。
　彼が言うには桜花に結婚を申し入れにきた人間がいるという。
　それに腹を立てているのだった。

［私悪くないやん］

「んなことどぉだっていいんだよ、第八に何言われたぁ！」

［(*ﾟ▽ﾟ*)］

　面白くなりそうだと口を噤む桜花。
　紅丸は両頬を鷲掴み、振り回す。それでも何も言わなかった。

「ったく」

　桜花は解放されるとすらすらと文字を書き始めた。

［ちょっとアドラバーストについて聞かれただけだよ］

　それでも疑いは晴れないようで、般若のような顔が戻る事はなかった。

「まぁまぁ若、飯にしましょうや」

「桜花ぁ、あれ燃やすぞ」

　と聞いているというのに返答を待つことなく紅丸は花を燃やした。

［おーうのーう］

　桜花は下駄を脱ぎ、玄関をあがった。
　燃やされた花には見向きもせず、燃やされなかった花は燃やした。

(ほんと若や浅草以外のことには一切興味がないな……)

［コンロ？］

「いや、なんでもない。だが本当に何を言われたんだ第八に」

　桜花は立ち止まった。
　長文を書くときはいつも立ち止まる。

［伝道者とやらが浅草で何かやらかしてないかのガサ入れをしたいそうです。
　まぁ普通のやり方で説得なんて無理ですよ、若様には］

「確かにな。でなんて言ったんだ」

　えっ、と驚いた顔をして一言、普通のこと、と書いた。
　紺炉はそうかと頷いて居間に歩き出した。

「何ぐだぐだと話してんだ、飯だ飯」

［おっさん］

「誰がだ」

［(*ﾟ▽ﾟ*)］

「その顔文字やめろ。表情と一緒で二倍ウゼェ」