その弐拾肆 兄弟 ページ25
「じゃあ森羅は弟を助けるためにネザーに行くんだ」
「はい」
わたくしには兄がおります。
もう顔も思い出せない、病弱で頼もしい兄でございます。
故にもう会えないというものがどれほど辛いもので、会えるかもしれない可能性がどれほど嬉しいものか、わたくしにはよくわかるのでございました。
「弟、どんなに成長してるかな」
「一回会ったんですけど、それはそれはもう可愛くて」
「良いねぇ！可愛いのは良い！！
森羅に似てるの？」
「どうでしょう？でも可愛いんですよ！」
台所。
紺炉と紅丸、アーサーは居間で箸を並べ、双子は桜花の足に挟まっていた。
「もし助けられたら連れてきなよ。
なんなら観光ついでにおばさんが奢ろう」
「本当ですか！？」
「本当さ。だから絶対助けてきな。
そんで絶対に助けられないなんて思うな。
新門紅丸の妹が太鼓判を押す新人なんだ、大丈夫」
森羅は目頭が熱くなった。
第八のメンバーが自分の話を受け入れてくれた時のように、桜花が安心しろと背を押してくれるのが堪らなく嬉しくて泣きそうだった。
「泣くついでに玉ねぎを切ってくれる？」
「喜んで！！」
味噌汁、ご飯、煮物に揚げ物などなど育ち盛りの少年二人がいる所為か、今晩の食事の品揃えがいつも以上だった。
「「いただきます」」
「若様声が小さい」
「あ？んなこたどうだっていーだろうが」
「は？その髪全部むしり取るよ？」
いつもの一喧嘩が起きてから夕食が始まる。
育ち盛り二人は遠慮なく食べ尽くしていく。
「ふぅー、食ったぁ」
「満タンだ(注:満足だ)」
「それは良かった良かった」
ゴホゴホと咳をしながら桜花は食器を片付けた。
退院初日、胸の虫がいなくなってからというものの調子がいいからと動いた。
そのツケが回ってきたのだろう。
「大丈夫ですか？」
「うん、退院初日に動くんじゃなかった……。
先寝るわ、ごめんね」
「いえいえ、おやすみなさい！！」
「その素直さ、うちのクソ兄貴にも分けてほしいわ。
んじゃおやすみ〜」
森羅は階段を登る桜花を見送り、紺炉に言われた通り特訓をした場所に集まる。
「桜花は？」
「なんか退院初日に動いたのがいけなかったって先に寝ました」
「自業自得じゃねぇか」
縁側に座る紅丸と入れ違いで紺炉が線香花火を持ってきた。森羅達は喜んで、すぐに始めた。
お互いの線香花火を吹き、落とそうとするも同時に落ちた。
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作者名：文字変換 | 作成日時：2020年9月7日 10時
