その弐拾弐 退院 ページ23
先代様、若様はこんなにも成長なさいましたよ。
貴方様との約束通り守れているかわかりませんが、彼が成長しているのは確かでございます。
ですがきっと貴方様は大馬鹿野郎と言うのでございましょうね。
……貴方様の言ったとおりのお方でしたよ、若様は。
ですがこの先、最強と謳われる新門紅丸が崩れてしまわないか、心配でございます。
「紺炉」
「おう、迎えに来たぞ」
「ありがとう。とは言っても持ってもらう荷物も何もないよ」
「知ってるよ。にしても凄いペラペラ喋るようになったな」
「貶してる？」
「褒めてるんだよ」
疑わしい目で紺炉を見た後、桜花は杖を突きながら階段を下りた。
道中、詰め所に今森羅達がいることを知った。
実践が足りないからと実践ばかりの紅丸に稽古の相手を頼んだのだ。
「い〜なぁ〜、私も稽古したい」
「けが人は絶対安静だ」
「でも本当に全盛期くらいまでは力戻したい」
「なんでだ？」
「私が敵なら最強なんて厄介な新門紅丸は先に潰すから。
大胆な行動はしなくてもいつでも殺せるようにはするから」
冷静に、淡々とそう答えた。
確かに秘密兵器があるなら知っておきたいように、厄介なものは先に取り除きたい。
伝道者、白装束がそんな思考を持っているかは置いておいて、可能性はある。
「森羅が羨ましい……」
「まぁそう言うな。絶対安静じゃなくなったらやろうな」
「……むぅう」
眉をひそめ、頬を膨らませ堂々と不機嫌な気配を醸しながら帰宅する。
真っ先に冷蔵庫に入っていた茶碗蒸しを抜き取り、縁側へ行く。
「桜花さん！」
「姫よ、無事だったか」
「やほ〜順調かい？」
途端、二人は吹っ飛んでいった。
「てめぇ、兄貴には挨拶なしか」
「兄貴面すんな、わ、か、さ、ま」
「ああ？」
「てか誰このもじゃもじゃ」
茶碗蒸しを食べながら縁側に座るリヒトに指を指した。
「ヴィクトル・リヒトっす。第八の押しかけ科学捜査班っす」
第八とは全然毛色の違う人間。
しかも自分を殺しかけたジョーカーの御友人だ、信じれる気がしなかった。
「……ふ〜ん、間違えて事故死なんてしないでね？」
「怖い事言わないでほしいっす……」
茶碗蒸しを一口。
縁側から裸足のまま地面に降りた。
「若様交代しよ、ベットに縛り付けられていたおかげで身体がなまった」
「前からだろ」
「今はもう虫がいないんで絶好調なんです〜」
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作者名：文字変換 | 作成日時：2020年9月7日 10時
