【炎炎ノ消防隊】番人に梔子 (ページ18)

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その拾漆　喧嘩ページ18

わたくしは新門紅丸は苦手でございます。
　ですが浅草の破壊王たる新門紅丸は大層、好いております。

　何故？
　決まっているでしょう。

　それが憧れであり、心躍る展開を見せてくれる謂わばびっくり箱のような人間だからでございます。

「今この町は外の奴らから攻撃を受けている！！
　浅草の人間そっくりに変装して、俺達を騙してやがるんだ！！
　そいつらを見分ける方法はねえ！！
　このままじゃにっちもさっちもいかねぇ！！

　だが……そんなこと知ったこっちゃねぇ！！」

　湧きあがる浅草の人々。
　桜花も紺炉も、その姿を見上げながら興奮していた。

「新門大隊長！！ご命令を！！」

　紺炉達は足を揃え、今すぐにでも動ける姿勢を保つ。

「お前等全員殴り合え！！
　本物も偽物もかんけぇねぇ！！
　浅草の人間は偽物なんぞに負けやしない！！

　安心しろ、火事と焔人は第七が面倒を見る。

　思う存分殴り合え！！」

　それを合図に人々は殴り合いを始めた。
　祭りだ、祭りだと殴り合うが絶対偽物に負ける本物が混ざってる。

　だがそれでいい。
　それでも面白いじゃないか。

　桜花は満面の笑みで振り返った。

「私のお相手は、てめぇかジョ～カァ～」

「おいおい俺はドンパチやりにきたわけじゃねぇよ。
　お前のその胸の中にある虫を回収しに来たんだよ」

「なんだ虫屋にでも転職したのか？」

　返答も聞かず、桜花は殴った。
　躱したジョーカーが桜花の背に爆炎を浴びせる。

「全盛期のお前なら負けていたが……今なら、殺せる」

「気色悪い笑顔だな」

　紅丸が纏を手に櫓から移動するのが見えた。
　ちゃんと櫓を元に戻したが、ぽっきりと折れているのだ。崩れ落ちた。

「よそ見かぁ？デリーター」

「その名で呼ぶな真っ黒黒助！！」

　呼び名の所為でお互い印象が逆だ。
　そんなことはどうでもいい。

　劣勢の桜花は早々に切り上げたいのだが、速すぎる。

　全盛期、まだ灰病にかかる前に戻りたいと心の底から願った。
　しかし願って神様が即座に直してくれるほど、恵まれてはいない。

「お前は逃げられねぇなぁ、デリーター。
　どう足掻いたってお前は地獄で殺すしか能のないモルモットだ」

「……確かに今も昔も焔人を殺してる。
　でも今は昔より晴れた気分だよ。今なら尚更なぁ！！」

　一発蹴りを入れると、桜花は膝をついた。
　限界をとうに超えているのに発火能力を使った所為だ。

　灰病も、こんな弱い身体も憎みたくなった。