その壱 番人 ページ2
わたくしに声はございません。
生まれてこのかた話したことがありません故、至らぬ点もございましょう。
さてこの世には焔人と呼ばれる人体発火現象による犠牲者が多くおりました。
そして発火能力を持つ第二、第三世代と呼ばれる方もおりました。
中には焔人を相手に鎮魂、消火活動を行う特殊消防隊がおります。
わたくしもその一人、消防官ではございませんが、少しばかりお手伝いをしております。
故に本日は助手として大隊長会議に参加しているのでございます。
｢普段顔を見せない第7も参加している…やはりただ事では無いな｣
｢あの人が最強の消防官と名高い、第七の……｣
ひそひそと話す声の方へ視線を向けると何故か満面の笑顔の少年。
第八の新人と噂の日下部森羅だとすぐに桜花は、理解した。
「なにが面白い、クソガキ」
「若っ」
スパンッと紅丸の頭に衝撃が走る。
笑顔だというに虚無の目でこちらを見る桜花に叩かれ、少し落ち着く。
桜花はごめんねと両手を合わせ、第七に向けて謝る。
すると老人が歩いてくる。皇王だ。
｢各隊、大隊長、揃ったようですね。では、緊急大隊長会議を始めましょう｣
鈴の音が鳴る。
桜花は眠たそうに話を聞きだした。
｢東京軍将軍や、消防庁長官とも話をしました。
この国を脅かす者達が暗躍しているそうですね。
彼らの行いは、太陽神の加護を穢す行為です。
特殊消防隊全部隊、伝導者を反逆者として、打ち倒すのです！｣
くだらない、と桜花は思った。
それは当然兄妹のように育った紅丸もだった。
｢なぁにが太陽神だくだらねぇ……｣
｢紅丸新門！貴様無礼がすぎるぞ！！
このグスタフ本田の制裁を浴びる前に皇王へ詫びたまえ！！！｣
｢うるせぇ、“本田、グスタフ”。俺の名前は“新門紅丸”だ｣
その会話に当然違和感を感じる者は少なからずいた。
皇国式の名ではなく、原国式の名。
｢原国式の呼び名……｣
｢原国主義者か｣
｢俺たち第7はもともと、自警団のバカどもの集まりだ。
皇国と太陽神に忠誠を誓った覚えはねぇ。第7は好きにやらせてもらうぜ。
……桜花」
此処に残って話は聞いていくよ、と書かれた紙を見て紅丸はそのまま去った。
「待たぬか！紅丸新門！話は終わってないぞ！」
途端、本田の前には炎で模られた文字が浮かぶ。
［まだ喧嘩をしたいと言うなら］
歪な声と殺意が響きだす。
「アィテェニナァア……ルヨォ」
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作者名：文字変換 | 作成日時：2020年9月7日 10時
