1話 ページ1
「…んで、なんで俺なんすか」
私の目の前で不機嫌そうに仁王立ちしているこいつは所謂天使。
今回の仕事を任せた張本人だ。
パラパラといくつかの書類をめくりつつ答える。
「だってしょうがないよ。こんな多忙期にあんな悪戯があるなんて誰も予想してなかった。人手が足りないんだよね。」
そう悪戯。言ってしまえば悪戯で片付くような優しいものじゃない。
とある天使が悪戯と称して、色んな人を現実世界のゲーム、アニメ、漫画の世界に飛ばしやがった。
「ま、あとは任せたよ。」
言いながら手元の書類に目を落とす。
毅然と並べられた文字列を見て、何度目かわからないため息をついた。
＊＊＊＊＊
【名前】
氷室 A
【目的】
ヒロアカの世界に侵入したイレギュラーを終了させること。
【一言】
「こう、なんでこんなに強いんだろうね…」
＊＊＊＊＊
氷室Side
俺、氷室A。今は書類の整理中。
どーやら先輩の悪戯の後始末が後輩の俺に回ってきたらしい。
転生届けと仰々しく書かれた書類には走り書きで名前が書いてある。
何度か確認してから書類を提出し、身支度を整える。
はあ。まさか初めての出張がまさか一人で、そしてこんなに慌ただしい物になるとは…
先輩…この恨み忘れませんから…
そう考えつつ、現世へと続く扉を開けた。
＊＊＊＊＊
「何 が ど う し て こ う な っ た ？」
今の状況を簡潔に伝えれば『職質的な物』を受けている。
扉の座標が間違っていたらしく空から落ちてきたので怒られています。
まあ怒られてるとか職質よりも事情聴取のが正しいけど…
つかこの赤い羽…資料にあった鷹見啓悟じゃね？
あー…確かヒーローだったよな…？
なら俺が被害者なら解放してくれそうだな…
俺の今の見た目は女子高生…行けるか？
「あのっ私、変な人に触られて…気づいたらそ、空にいたんです…」
ホークスがいなかったら私っ…と付け加えて顔を覆ってみせる。
表情が見えないのをいいことに顔色を伺う。
さすがNo.４だかNo.３ヒーロー。
顔色一つ変えずに次の言葉を探してる。
危機は去り、喉元過ぎれば熱さ忘れるってな感じで速やかに帰宅と相成った。
「はぁ…やっと帰ってきたよ…」
ここが俺の家…最高に便利で外見にあわせて適当な内装に変わってくれる家。
俺の業務まではあと２日…それまでにターゲットの情報やら外身の人格だとかをインスプットする。
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作者名：amea | 作成日時：2020年11月18日 21時
