序章 ページ1
この村の奥の森には、決して近づいてはいけないよ。
森の奥深くにある館には吸血鬼が住んでるというからね。
吸血鬼は人間の血を吸って生きているんだ。
たまに、村に降りてきて深夜に人間を襲って血を吸う生き物なんだ。
満月の夜は外に出たらいけないよ。
彼らは月が満ちていくたびに力を増していく。
刃物でも銃でも倒せない、倒せるのは太陽の光だけだ。
村に伝わる、小さい時から伝わる話のひとつ。
けれど、私はこのおとぎ話をあまり信じていない、吸血鬼なんてその話だけでしょ。
そう思っていたのに――――
「ちょっと、どうしたのその傷！」
「え…お前、俺が怖くないの…？」
「怖いも何もけが人じゃない！うちで手当てしてあげるから、おいで！」
「は、ちょっと…！？」
雨の日に出会った、傷だらけの男の子。
雨に濡れて髪はぺしゃんこ、瞳は緑色で泣くのをこらえているのか潤んでいる。
腕にある切り傷は見ているこっちが痛々しい。けどこの傷、怪我をしたというわけじゃない。
「誰かに…切られた…？」
「そーだよ、俺、化け物だから。」
「は？」
「あんたさ、見ず知らずの人間を誰もいない家にあげるとか、危機感なさすぎじゃん？」
「はぁ！？」
「ちょっとは考えなかった？それとも子供だと思って…気にしなかった？」
そう言って、少年は自分の傷を舐めた。
するとどうだろう、そこにあった傷はまるでなかったかのように消えていく……
消えていく……？
「嘘……待って、もしかして…」
「そう、俺の正体は……吸血鬼、なんだよね。」
「そんな！だって、吸血鬼は夜しか…」
「あー…覚えといた方がいいよ。吸血鬼は日光遮れれば日中でも動けるから。」
そういって、少年は来ていたマントを翻す。
次の瞬間目の前には私と同じような背丈の男性が立っていた。
「え…！？」
「変化してたわけ。気を付けた方がいいよー」
そう言ってドアから出ていこうとする青年。
え、血を吸うとかじゃないのか。そう思った瞬間に思い切り腰を引かれる。
気が付いた時には彼に抱きしめられ、身動きが取れなくなっていた。
「俺は恩は大事にするから血は吸わない。声かけてくれてありがとう。」
「うん…？」
「お前、名前は？」
「A……」
「Aね…また俺に会いたい？会いたいなら…明日の夜、森の奥にこいよ。」
そう言い残して彼は雨の中に消え去った。
ここから、彼と私の物語は始まる……
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天霧 珠響(プロフ) - 号泣したあああああああ｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡素晴らしい作品でした！！！ (2020年6月30日 20時) (
レス) id: 6d7b469f38 (このIDを非表示/違反報告)
真冬（まふさん）(プロフ) - すごく泣けましたヽ(；▽；) (2019年12月30日 22時) (レス) id: 357271c7c9 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 泣けました。(僕、これ読み終わった後に服が涙で濡れてたとか知らない(/ _ ; )) (2019年11月11日 7時) (レス) id: 4127dbd5b5 (このIDを非表示/違反報告)
アニメヲタク(プロフ) - はじめまして！他の作品も見させて頂きました。凄く感動しました。素晴らしいストーリーですね！！ (2019年4月15日 0時) (レス) id: 0ec9b45328 (このIDを非表示/違反報告)
Elice(プロフ) - momoheartさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて、泣き初め…というのでしょうかね？いただけてすこしでも表現したいこと伝わっていれば幸いです…！お読みいただきありがとうございました！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: 2363fe1fb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Elice | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Elice_id/
作成日時：2018年10月18日 1時
