第53話 ページ4
母「ただいま〜！」
『……！お母さん！』
玄関で母を見つけると、私は母に抱きついた。
母「紗季〜！しばらく家に帰れてなくてごめんね。元気にしてた？」
『元気にしてたよ。お母さんこそ、元気だった？』
母「元気よ。さ、ご飯にしましょう！色々聞きたいこともあるしね〜」
「「いただきます」」
母「ん〜♡すごく美味しい、作ってくれてありがとう！紗季はすごい！」
『ありがとう、お母さんが作ってくれたのも美味しいよ。』
母「そう？よかった！いっぱい食べてね。」
『ありがとう、お母さん。』
母「ところで紗季、最近の学校はどう？楽しい？」
『…楽しいよ。すごく、楽しい。』
母「ふ〜ん。」
母が嬉しそうにニコニコしながらこちらを見てくる。
母「涼野くん？だったかしら？貴方が一緒にご飯食べてくる日に連絡くれた子がいたでしょう？あれからずっと気になってたの！ねえねえ、涼野くんってどう？かっこいい？」
久々に話すからか、母はいつも以上にグイグイと質問をしてくる。
私は箸を置いて、真剣に質問に答え始めた。
『……うん、すごくかっこいいよ。すごくかっこよくて、優しい人。』
母は私の反応にきょとんとしては花を咲かせたように笑った。
母「…ふふ、そうなの。」
『私ね、入学してすぐに同級生のサッカー部で応援したい2人見つけて…涼野くんはその1人なの。今までは、2人を遠くから見ているだけで十分だって、そう思ってたの。だけど、最近涼野くんやサッカー部の友達とも仲良くなれて…テスト勉強も皆で一緒にやったの。前も楽しかったけど、今はもっと楽しい。』
母「…そう、そう、よかった……。」
『…お母さん……？泣いてるの…？』
母は両手で顔を覆ったまま、涙を流していた。
初めて見る母の涙に、私は固まってしまった。
母「ごめんね、嬉しくて。紗季がこんなに学校が楽しいって言うなんて初めてだったから…。お母さん、いつも家に帰れなくて、家のことをほとんど貴方に任せっきりになってしまっていたし、なにより…紗季と一緒に時間を過ごせないのが申し訳なかったの。」
『……お母さん…。』
母「勉強も部活も人間関係も大変で、色々とストレスがかかる時期なのに、辛い時に母親として貴方のそばにいてあげられないことが悔しかったの。小さい頃から紗季には寂しい思いをさせてばかりで…母親失格だなって思ったことも沢山あるの。でもこんなこと、紗季に心配を掛けたくなくて言わなかった。昔から寂しい思いを沢山ごめんなさい。」
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作者名：Haruhi | 作成日時：2024年3月15日 13時
