第70話 ページ21
桜「紗季ちゃん、やっぱり南雲くんと仲良いんだね！」
『え、やっぱり…？』
桜「加恋ね、南雲くんと紗季ちゃんが連絡先交換してるの見ちゃったの！だから、南雲くんと仲良いんだなあって。涼野くんとかサッカー部のみんなとも仲良いよね？いいな〜加恋も仲良くなりた〜い。」
『……。話したこともないのに、いきなり私に会いにきたのはサッカー部の皆と仲良くしてる私が嫌だから…？』
そう言うと、加恋ちゃんはぴたりとペンの動きを止める。
『緑川くんから聞いたよ。加恋ちゃんは南雲くんのファンクラブで中心的な位置にいる1人だって。…もし、これ以上サッカー部の人たちと関わらないでっていうことを言いたくて私に近づいたなら、ごめんなさい。そのお願いは聞けない。
私、涼野くんのことが好き。それ以上に、サッカー部の皆といる時間が好き。だからもしどんなに酷いことをされても、諦められない。』
桜「…私はそんな卑怯なことしないよ。」
いつもの加恋ちゃんの声とは違う、落ち着いた低い声が私の耳に響く。
びっくりして加恋ちゃんの方を向くと、苦笑いを浮かべている。
桜「あはは…、びっくりしたでしょ？これ、私の地声なの。いつもの声とか口調は作ってる。髪も…本当はかっこいいショートにしたいけど、女の子らしくなるために伸ばしてる。……変でしょ。」
加恋ちゃんはいつもの可愛らしい口調ではなく、中性的で落ち着いた口調になっていた。男の子みたいと本人は地声を嫌っているようだが、私にはとてもそれが魅力的に見えた。
『…そんなことないよ。』
桜「…え？」
『私は女の子らしい声の加恋ちゃんも、どこか中性的だけど落ち着いた声の加恋ちゃんもどっちも好き。魅力的だと思う。髪型だってそうだよ。どんな姿であっても、加恋ちゃんは加恋ちゃん。素敵なのは変わらないよ。』
ニコリと笑ってそう伝えると、加恋ちゃんが驚いたような顔をしている。
桜「……紗季ちゃんは、あの時の南雲くんと同じことを言ってくれるんだね。」
『南雲くんと…？』
桜「…私ね、南雲くんが好きなの。南雲くんを好きになるまでの話、聞いてくれる？」
『うん。』
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作者名：Haruhi | 作成日時：2024年3月15日 13時
