第4話 ページ7
「Aは学校楽しい?」
すみちゃんたちと別れた帰り道。有一郎兄さんは将棋の本を借りてくる、と図書館に行っているらしく、珍しく無一郎兄さんと2人きりだ。
『うん、楽しいよ』
お友だちも出来た。
イギリスと比べると少し窮屈なところもあるけれど、今のところ初めての日本での学校生活を楽しんでいた。
ただ一つ気になるのは……。
『日本って先生が生徒を追いかけ回すのが普通なの?』
「……え?」
そう、昼休みになる度に宇髄先生に追いかけ回されるのだ。
あの図体で「時透ー!!!!」って叫ばれるのだ。誰だって逃げるだろう。そして追いかけられる。
善逸に気の毒そうな目で見られた。
「誰にされてるの……?」
『宇髄先生だけど』
「へ、へえ……」
今までにこにこしてた無一郎兄さんの笑顔が引き攣った。何か悪いこと言ったかな?
「(あの筋肉ダルマ、Aの記憶が戻るまで近づくなってあんなに言ったのに……)」
うわ、こめかみに青筋立ってる……
『む、無一郎兄さん……?』
「僕ちょっと学校に忘れ物した。先帰ってて」
『あ、うん……』
小さくなっていく兄さんの背中を見送って首を傾げる。
何だったんだろう……。一瞬、本当に一瞬だった。
他人だったら気付かないような一瞬。
『……なんであんなに泣きそうな顔をしていたんだろう…』
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作者名:すぴか。 | 作成日時:2023年1月10日 10時