第2話 ページ5
『さっきの先生なんて言うの？』
有「……宇髄先生だよ。中等部と高等部の美術を受け持ってる」
ウズイ……。
口の中でその三音を転がす。聞いたことの無い名前だ。どこかで会ったことがあるわけではないらしい。じゃあ何なんだろう、この懐かしさは。安心感は。
無「それはそうと頭痛とか大丈夫なの？イギリスから帰ってきてほぼその足で入学式に出たでしょ。疲れが出てるんじゃない……？」
心配そうに私の顔を覗き込む無一郎兄さん。
そう、私はつい昨日までイギリスに居て、留学から帰ってきたその足で入学式に出たのだ。
正直寝不足やら時差ボケやらが祟って身体が重い。
『ちょっと時差ボケでだるいかも……？でも大丈夫だよ』
にへら、と笑うとそう……。と呟き無一郎兄さんは眉を下げた。
時々兄さんたちはこんな表情を浮かべる。
泣きそうな顔で笑ったかと思えば切ない表情で私を見ていたり。特に無一郎兄さんは私の怪我に敏感で、少し転んだだけでもすぐ駆けつけるのだ。
そして今にも泣きそうな顔で大丈夫？だなんて聞くもんだから、なんで兄さんが泣きそうなのって笑ったのは記憶に新しい。
こんな過保護っぷりを見せる双子の兄たちは非常によくモテるらしい。
廊下の女子たちは兄さんたちを見てるし私には鋭い視線が刺さるしで痛い。主に心が。
「誰？あの女」
「無一郎さまと有一郎さまに近付くとか何あの女」
『……。』
いや、怖い。
日本に帰ってくると改めて思う。女子って怖い。妹ですよ私。髪色とか似てるでしょ、分かってよ。
髪色とか目の色は兄さんたちと同じだ。違うのは髪型と背丈くらい？あ、もちろん性格も違うけど。
「何かされたら言えよ」
「兄さんと一緒にそいつぶっ飛ばすから」
『わ、わかった……』
怖いのは兄もだった。
過激すぎだろ日本。いや私も日本人ではあるけど。
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作者名：すぴか。 | 作成日時：2023年1月10日 10時
