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虎杖は困惑した。
いきなり目の前に女性が現れ、かと思いきや足が勝手に後退り、槍の先端部分が喉元で止まったからである。
足の方は宿儺だろう。
と、解釈した。
「反応がいいね、君。それとも、両面宿儺かな？」
「わっ、わ！」
言い終わるといきなり槍を振り回してきた。
虎杖は避けるが、いつ槍が心臓を貫くか冷や冷やする。
「"玉犬"！」
「虎杖！」
釘崎が叫ぶと虎杖は低く伏せた。
伏黒の玉犬と釘崎の五寸釘が女性に向かう。
「悪くないね」
玉犬を槍で弾き、釘を全て凪いだ。
初見殺しであるはずなのに、だ。
「筋いいねぇ、君達。……とりあえず、君には死んでもらわないとねーぇっと！」
「がっ！？」
虎杖を蹴飛ばし、槍を投げた。
真っ直ぐ、脳天目掛けて槍は空を裂く。
「……A、君に依頼した人達は？」
「おーおー。……美人は怒ると怖いねぇ」
虎杖の前に、五条が立っていた。
無下限術式により、槍は五条の前で止まり、カラン、と落ちた。
目隠しを取った六眼で、女性を見つめる。
答えを待っているようだ。
「……五条家からも、多数だけど？」
「他は？」
「上からかな〜。依頼書送ろうか？ 数多すぎて笑えるぞ」
先程とは一変。
女性からは殺気が失せた。
五条は殺気ダダ漏れだが。
「フリーでやってる人間全員に、ってわけじゃなさそうだな。一級以上でフリー……つまり、お前みたいにある程度独立している呪術師に依頼が回ってる可能性が高いか」
「それはないな。両面宿儺なんて特級祓えて、フリーな奴はあたししかいないからな」
「……このまま引き下がる？」
「やだね」
次の瞬間、虎杖の腕が少し、切れた。
虎杖よりも先に宿儺が察知し、勝手に避けたのだ。
「悠仁！」
「平気平気！」
微かに腕から血が出ている。
女性は剣を持っていた。
「特級呪具・酒呑丸。大江山の鬼どもの首魁、酒呑童子が振るったとされる武器が加工されたものだ」
妖しく薄く紫に光る剣。
特級呪霊には、特級呪具をぶつける。
通りである。
「A」
ピリ。と、空気が張り詰めた。
「許さないから……」
五条の瞳が、爛々と蒼く光る。
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作者名：櫻子 | 作成日時：2021年1月10日 0時
