ゼラニウムをキミに (ページ1)

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大好きな姉ページ1

今日も面会時間ギリギリの暗くなった時間に静かな病院を歩く。

私の歩く音がコツ、コツと廊下に響く。

廊下の突き当たり、そのドアを私はゆっくり開く。

私は部屋の真ん中に置かれているベットの横椅子に座る。

この部屋はなにもない。色もない。
入院した時のまま。何も変わらない。

『お姉ちゃん、ただいま。』

この病室に眠っているのは私の姉。
私の大好きだった姉。

姉の眠る横に腰掛け、今日1日の出来事を話す。

手を握り、返ってくるはずのない返事を待つ。

「パクさん、もうすぐ面会時間終了です。」

来る時間が遅いせいか面会時間が終わるのは早い。
でも、その方が私にはいいのかもしれない。
長くいても余計なことを考えてしまうから。

『また明日くるね。』

今日もまた、静かなままの病室を後にする。

学校終わりにここへ通うのはどれくらいだろう。

『もうすぐ2年か…』

吐いた息が白く曇る。
その白さがこの寒さを物語っている。
まるで私の心の中のように。

私の心の中も息を白くする冷たい空気のように冷めたまま。

～～～

私の家は父が早くに亡くなり、母は朝から晩まで働きっぱなしだった。
そのせいですぐに体調を崩して亡くなった。

両親の愛を知らずに育った私には
姉が全てだった。

あの時の私には姉の全てが完璧に見えていた。

完璧だった姉は私の誇りだった。