なな ページ8
と、碧が恐ろしい発言をしている間にボスが現れたらしい。
ハッチから現れたのは見目麗しい金髪の麗人。
タレ目だが、どういう訳かその目の奥には鋭い眼光を秘めているため酷くきつい目付きに感じてしまう。
艦長が現れた途端に潜水艦の上にいた水兵達は全員敬礼の姿勢をとった。
「やはり貴様か、碧」
「……そっか、君がここの艦長だったんだね、オリヴィエ」
眉間に皺を寄せ、碧を見たこの人物はこの潜水艦の艦長であるオリヴィエ・ホール。
地位は少将。
六年から七年前に、碧がエレシュキガルと樹と共に北米にて参加した聖杯戦争のライダーのマスター、アレックス・ホールの四人娘の内一人である。
「全員休め」
一糸乱れぬ動きで全員ボスの指示通りに休みの体勢をとった海兵達を尻目に、オリヴィエは何故ここにいる、と碧に疑問を投げかけるのだがその声を遮る声に米神に青筋が浮かぶ。
「碧よ、お前このような美女とどこで知り合った? 隅に置けんのう。しかもこの戦艦の艦長ときた。屈強そうな男だとばかり思っていたが、あのような美女なら戦艦もろとも余が」
「イスカンダル、彼女は止めておいた方がいいと思うよ」
ざわつく水兵達をよそに鷹のような鋭い目付きになったオリヴィエはハッチから上がると、一蹴りで神威の車輪の上に降り立つと三十センチメートル近く上にあるイスカンダルの顔を睨んだ。
子供のように嬉々とした表情で声を書けるイスカンダルだったのだ、気を抜いていたのだろう。
唐突に腕を掴まれたため反応に遅れた。
素早く腕を掴んだオリヴィエはイスカンダルの懐に入ると背を向け、彼の腕を背負うようにしてから上体を前へと曲げた。
力を使っているわけではなく、ただのテコの原理の利用だ。
巨体が戦車の上から持ち上がる。
目を見開いて驚いているエレシュキガルと、にこにこと笑う碧、そして呆れていたり恐れていたり怖がっていたりと反応が様々な水兵達が見守るなか、ズドンと鈍い音と共に背負い投げを一本されたイスカンダル。
彼は目を瞬いて青空を背景に睨み付けてくるオリヴィエを見上げていた。
「……生憎、私は軍人だ。女だと嘗めるとこうなることをその頭に覚えておけ」
獣の如き眼光に、ますますとイスカンダルは目を輝かせた。
「気に入った! オリヴィエと言ったか、余の軍門に下らぬか?」
「……」
更に米神に青筋が浮かぶが少将、と部下の声に深々と溜め息を一つ吐いた。
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