にじゅうに ページ23
「管制室管制室、こちら────航空824便。応答をお願いできるかな」
ヘッドセットを装着した碧が操縦しながら無線で問う。
雲の中にいるためかノイズが酷く、だがそれでも人のような声は僅かに聞こえている。
『こ……──く……う、きこ……て……る』
「ごめん、ノイズが酷くて聞き取りずらいんだ。もう一度お願いできる?」
しばらくノイズのみのしか聞こえてこなかったが、周波数を調整すれば徐々にノイズが消えていき、人の声が聞こえてくる。
『こちら、──空港管制室、────航空824便。聞こえるか?』
「うん、聞こえたよ。早速だけどこちらの状況を伝えてもいいかな?」
マイク越しに聞こえてくる男性の声に、碧は酷く落ち着いた声で尋ねた。
『そちらの状況をお伝え願える』
「うん、まず始めに機長が報告していると思うけどスコーク7500であるハイジャックにあったんだ」
『7500? それは本当か?』
「あれ? 機長からトランスポンダで発信されてなかった?」
『生憎初耳だ』
ここにきて管制室と翠、いや────航空824便との間に
倒れて寝ている機長らしき人物を一瞥した碧は忘れてたのかな、と酷く軽い声で言うと更に報告を続ける。
「とりあえず────航空824便はハイジャックにあった。でも、途中でストーク7700、エコノミークラスの機体の天井が一部破損という緊急事態に陥っているんだ」
『……すまない、もう一度言ってくれ』
「天井の一部が外れて大変なんだ」
実に危機感のない声である。
コックピットの後ろでおろおろとしているエレシュキガルが不安そうに翠と倒れている機長や副操縦士、それとハイジャック犯が起きないかと交互に見ている。
『乗客は?』
「うん、多少怪我や混乱している人がいると思うけど、無事だよ」
『ハイジャック犯は?』
「僕が鎮圧して無力化したから大丈夫だよ」
『……すまない、今私と話をしている君は────航空824便の機長、ケビン・ゴメスじゃないのか?』
「うん、機長は気絶してしまっているから代わりに操縦経験のある僕がしているよ」
翠がそうマイク言うと、管制室側から少しの沈黙が降りる。
管制室の担当員は相手が機長とばかり思っていたのだ、無理もない。
『名前を伺っても?』
「僕の名前は碧・橘、日本人だよ」
『……確認した。ミドリ、私の名前はブラウン・ワトソン。君が最寄りの空港まで着陸できるように全力でサポートをさせてもらう』
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