にじゅういち ページ22
「俺と兄貴が飛行機の操縦できるのかって?」
「はい、椿さんから聞いたので気になって」
一方、こちらは海底一万メートル越えのマリアナ海溝チャレンジャー海淵にある独立人理継続保証機関unknown、その食堂。
「まぁ、うん、確かにできるっちゃできるけどさ、俺はそんなにだったな、うん」
昼食の準備をしながら、カウンター越しに尋ねてくる変態紳士の問いに樹は是と答えた。
「では、ミスター橘……碧さんの方が?」
「うん、断然できるな」
切ったり焼いたり煮込んだり、世話しなく動きつつも変態紳士の対応をする樹はイケショタの鑑である。
そして、彼が次の工程はこれだなと脳内で予定を立てている傍ら、幼少の頃の記憶を思い出す。
「子供の頃、母さんに連れられてイタリアのヴェネチアに何度か行ったことあるんだけどさ、その時に母さんに覚えさせられたんだ」
「どこで?」
「ん? 母さんの実家の私有地」
水の都と言われているヴェネチアの一部にて、飛行訓練をさせられたのはある意味恐怖だった。
下を見たら水、あと人と家。
ここ全部うちの私有地なのと言われた時は、幼き頃ゆえにテンションが上がっていたが今思い返せば恐ろしい。
どんだけ土地持ってるんだ、と。
「……確か、樹くんの母君は魔術師の家系だったね。お名前を聞いてもいいかな?」
「バートン家だよ。イタリアじゃ名の知れた魔術師の一族らしいぞ」
「まじか」
ひくりと顔をひきつらせる変態紳士。
とんだ有数の名門ではないだろうか。
「なら、碧さんのあの言葉で表すのがとんでもなく難しいあれは、バートン家の血筋ゆえか……」
「わかんねぇけど」
「……そしてその血筋は樹くんにも受け継がれていると」
「お、おう?」
「何故だろう、樹くんが受け継がれていると思うととても素敵なものに感じるのに、碧さんが受け継いでいると思うとどうしてこうも背筋に寒いものが走るのだろう……」
顔を青くさせている変態紳士に、何言ってんだこいつという表情をした樹は手を動かす。
「でも、ほんと兄貴何やってんだろ。唐突に冷蔵庫に大量の魚達と魚肉っぽい何かの襲来をしたかと思えばそれが一人でにマッコウクジラとなんかイカっぽいゲソが何本かあるし。まじで何してんだろ」
「しばらくは魚三昧になるだろうね」
「だな。何かリクエストあれば言ってくれな」
「ならば定番のフィッシュアンドチップスをお願いできるかな?」
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