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羞恥に駈られていたエレシュキガルだったがどうにか気を取り直し威厳も取り戻すためゴホン、と咳払いをして少し右斜め下を見た。
「えっと、碧。これはいったいどういう状況なのかしら……」
「レイシフトしたんだ」
「レイシフト? 海だから、オケアノスかしら? でも、それにしてはマナが少ないようだけど……」
ちらっと釣りに集中している征服王の様子をみて、それから大気にあるマナの薄さにオケアノスではないと彼女は自己完結する。
ならどこか、と碧を見れば平然とした様子で太平洋と口にする碧。
「へ? 太平洋?」
「うん、太平洋」
目をパチパチと瞬きを数回。
「……勝手に出て大丈夫なの、碧。この前、所長が不在の時に職員さんにとっても怒られていたって聞いたのだわ」
「うん、大丈夫だよ。エレちゃんには迷惑かからないようにするから」
「それは既に怒られることを前提の回答なのだわ!?」
はわわと慌てるエレシュキガルだったが、突如として
今更だが三人がいるのはイスカンダルに武装の一つである
体勢が崩れて倒れそうになるエレシュキガルを抱き留めた碧は、腕の中にいるエレシュキガルに大丈夫かと尋ねる。
「エレちゃん大丈夫? 怪我はない?」
「だ、大丈夫なのだわ。でもどうして急に」
「たぶん、獲物がかかったのじゃないかな?」
そう言って、イスカンダルの方を見れば目を輝かせながら釣竿を握っている征服王が。
「こ、この手応えは確実に大物だ! 特大とみた! 碧! 大物がかかったぞ!」
「どれぐらい?」
「うーむ、この引きといい、竿の動き具合といい、なかなかの大きさに違いない!」
リールを巻いて、竿を下げたり上げたり。
縁に足を掛けて全身で大物と格闘するイスカンダルに、まるで共鳴するかのように神牛達も雄叫びを上げてイスカンダルが釣り上げやすいように波を掻き分けてあちらこちらと移動する。
「私も引っ張るの手伝うべきかしら」
「エレちゃんは何もしなくてもいいよ、それにきっとそろそろ終わると思うし」
と、碧が言い終わった途端に少し先で何か長いものが見えた。
それは触手のようなもの。
え、と少しだけ顔を青くさせるエレシュキガルだが、そんな女神をよそに無情にもイスカンダルは力いっぱいリールを引っ張り上げ、竿を上げた。
「獲ったぁ!!!!」
勢い良く宙へと投げ出されたそれは真っ赤な体色の巨大なイカだった。
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