じゅうに ページ13
運転席の方へと向かった碧とエレシュキガルだが、既に運転手と意気投合しているイスカンダルがいた。
ついでにいえば、運転手は碧にとっても非常に見覚えがあるのだ。
確か、彼は……。
「おうおう！ ミドリとあの時の嬢ちゃんじゃねぇか！ なんだアレクセイ、お前ミドリの連れだったのか？」
「おうとも！ 余の
「こりゃあ驚いた！」
がははと笑い肩を組み合うイスカンダルと運転手。
運転手の手には缶ビールのようなものが握られている気がするのだが、おそらく気のせいだろう。
嬢ちゃんと呼ばれたエレシュキガルは碧と手を握っていない方の手で頬に当て、あわあわと照れていた。
「やぁ、六年ぶりだね」
「……！ なるほどなるほど！ 理解したぜミドリ！ お前はあれだろ？ 新婚旅行かデートかだろ？」
「新婚ッ!?」
そ、そんなまだ結婚も何もしてないのに、いやでもいずれはそうしたいと思ってるけど。それでもまだ式も上げてないのに旅行なんてそんな……。はっ！ まさか碧はそれを狙って？ いやいや確りしなさいエレシュキガル、ここはまず業に入っては業に従わないといけません。ウルクではちょっとややこしいけと、碧が住んでる日本だと確か。
と、色々と思考の海に沈んでしまっている可愛らしい女神の思考回路を読むのはここまでにしておいて、男連中に視点を当てていこう。
ん？ まだ女神の思考回路を読みたい？
やめておけ、あとで人外に葬られるぞ、ついでに色々とげふん。
想像に浸っている女神を尻目で見た碧は否と唱える。
「今日は珍道中っていうものを体験するためなんだ」
「珍道中？」
かくかくじかじかと碧が話せば運転手は腹を抱えて笑っていた。
「その兄ちゃん達随分とアメイジングな体験してんな！ んでもってそれを体験しようとしてるお前さんはクレイジーすぎるぜミドリ！」
「ほほう！ ランサーの騎士王のマスターと坊主のマスターはそのような冒険をしていたとは！ 碧よ！ 早く余等も体験せねば！」
唯一のツッコミ役であるエレシュキガルが思考の海に航海しているため、ボケにボケが重なってボケの飽和状態となっている。
そろそろ戻ってきて女神。
「あ、でも」
わいわいと話す運転手とイスカンダルをよそに、碧はポツリと呟いた。
「エレちゃんとのハネムーンも楽しみたいなぁ」
この言葉をエレシュキガルの耳に入っていなかったのは、はたして幸か不幸なのか。
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