じゅういち ページ12
無事にサイパン国際空港手前の海域まで送迎してもらった碧達は、オリヴィエ含む水兵達にに別れを告げて神威の車輪にてサイパン島の人気がない裏手まで向かった。
宝具は虚数空間に戻した征服王は、三人と共に上陸。
空港に向かって歩くのだが少しばかり徒歩では遠い。
ならばどうするか。
「むむ、誰も止まらんではないか。碧よ、本当に止まるのか?」
「僕の時は止まってくれたよ」
道路にてヒッチハイクする、のである。
ここは本来女性であるエレシュキガルがすべきなのだが、彼氏である碧が到底許すはずもなく。
好奇心旺盛なイスカンダルが決め決めなポーズで真っ白い歯を見せて、行き交う車に向かい親指を立ててヒッチハイクをしている。
木陰にてイスカンダルの様子を眺めつつ、そわそわと落ち着かない女神にどうしたのかと碧は尋ねた。
「どうしたの、エレちゃん」
「……なんていうのかしら、こう、……少し、落ち着かないだけなのだわ」
「落ち着かない?」
頷くエレシュキガルの目線は膝を見詰める。
冥界の女神たる自分が、このような体験をするのは到底無理だと思っていたため。
地上は妹であるイシュタルがいるため、自分は地下の暗い所でしか居場所はないと思っていた。
だが、今こうして地上にいる。
「こうやって、地上に触れる機会はほとんどなかったから、その……」
「エレちゃん」
愛称を呼ばれて碧の方を見れば、碧もまたエレシュキガルを見詰めていた。
「確かにエレちゃんは、こうして外の世界に触れる機会が今まで少なかったのかもしれない。でも、今は違うでしょ? エレちゃんが望むなら世界一周にでも連れていってあげるよ」
そう言う碧の顔はとても楽しそうだった。
対してエレシュキガルはときめく胸を両手で抑え、少しだけ顔を俯いて。
だが、確りと頷くという行為はしていた。
「おお! 碧、女神よ! なかなか派手なトラックが止まってくれたぞ!」
「わかったよイスカンダル。行こう、エレちゃん」
先に立った碧はエレシュキガルに向けて手を差し出す。
その姿はとても──。
「……ありがとう、碧」
手を伸ばし、掴んだ手はとても暖かかった。
手を繋いで嬉々としているイスカンダルの元へと歩みを進めた二人なのだが、イスカンダルがヒッチハイクで止めた派手なトラック、いわゆる日本でよく見かけるデコトラは非常に既視感を覚えるものだったのだ。
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