変わらなくていい ページ23
目を瞑ることも後ろに退くこともできないまま、
まるで時が止まったかのような静寂が流れる。
ずっと瞳を見ているといつの間にかさっきのそれは消えていた。
一体何なのかと思っていると、廉はにやりと意地悪げに口角をあげる。
「……キスされるとでも思った？」
その問いに一瞬訳が分からず「え？」と返す。
すると廉はわずかに目を見開いて顔を歪めたあと、
ぷっと吹き出しながら私の手を離して上半身を起こす。
「っははは、あはは……っ！」
爆笑している廉を横目に私も上半身を起こして。
なに笑ってんの？と聞いてみても廉はずっと笑ってるだけで。
何なの、と拗ねかけていると廉はようやく笑いを納めてこちらを向いた。
「なんや面白ないな」
「私に面白さを求めないでくれる？」
「えー、キスされると思わんかったん？」
「ちょっと無視しないでよ」
まるで会話が噛みあわない。
たまに廉ってこうなるから意味が分からない。
私の質問を無視して聞いてきた廉は、そのまま私を見つめ続ける。
それに観念して大きく息を吐いて立ちあがりながら口を開く。
「………思わなかったよ、少しも。
だって幼馴染だし、別にそんなの何も思わないよ」
わずかに沈黙があったあと廉はちょっと笑って立ちあがって。
「先行っとるでー」と部屋を出ていった。
「あっ、こら廉！待って！」
叫んだけど廉は「何も聞こえーん！」って行ってしまった。
部屋にひとり取り残された私はさっきの問いを思い出してふっと呟く。
「………私はこのままがいいんだよ」
だって、このままが一番心地良いんだから、
何も変わらなくていいの。
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←それは透明を浸食する
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 260人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
