動きだしたのは月夜 ページ17
「……ねぇ、A、」
ふいに玄樹に名前を呼ばれて、
夜風になびく髪に手をあてて押さえながらゆっくりと顔をそちらに向ける。
「なーに?」
もう月も高くなって闇も一層深く暗くてゆっくりと睡魔が襲ってきて眠たいせいかいつもより声音がやわらかい。唇の両端をあげてゆるりと微笑む。
玄樹もこちらを見ていて変な感じ。久しぶりに真っ直ぐ顔を見た気がする。
あぁそっか、ずっと隣にいるから横顔にばっかり見慣れちゃってるのか。
「いつまでこの関係が続くと思う?」
「………え?」
まるでもう続いていかないようなその言い方に違和感を覚えて。
突然の質問の意味がよく分からず戸惑う。
少し冷たい風が吹いてひやりと頬を撫でた。
それで眠気が吹き飛びハッキリと目が覚めてようやく質問の意味を理解する。
「……ずっと、続けばいいなぁって思うよ」
私たち3人は今まで彼氏や彼女とかいう存在を誰もたったの1度も作ったことがなかった。
作ったとしても幼馴染を優先して全く意味が無いと分かっているから。
でも、もしも幼馴染より優先したいと思える存在ができたなら?
この関係はきっとバランスを崩し、もう続いていかなくなるだろう。
さっきの質問はつまりそういうことだ。
そうなると分かっているから2人は気を使ってそんな存在を作らないだろうか。
このふたりなら、彼女なんてあっという間に作れてしまうと言うのに。
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