君が咲く２

◇ ページ19

渡辺side


それからというもの、目黒とは関係がピリついていた。


言い合い、とまでは行かないけど、出来るだけコミュニケーションを交わさないようにしていたし、口ではりょーかい、と言いいながらも目黒の話は聞き流すことが多くなった。


ただ、目黒の方は時折残念そうな、寂しそうな顔をしているから、その度に意地張ってるのは俺だけなのかと子供みたいな自分が惨めになった。


そんな心的負担もかかってか、カンファで情報共有されてるものも俺だけ頭に入っていなくて、ただでさえ忙しいのに病棟を駆け回ったりと余計に自分の首を締めていた。


毎日毎日身体の一部が少しずつ削れていくような気がして、こんなことになるならさっさと目黒に弱音を吐いてしまえば良かったのか。


いや、俺のプライドが許さなかったのだろう。












岩本side


もう12月なんて、誰が信じられる？


秋の入り込む隙間なんてないくらいに寒かったというのに、12月に入って更に冷え込んだ。


無事みんな予防接種は終えたものの、まだまだ油断は出来ない。


実際、児童精神科病棟からも何人か発熱してる子が出てるということでちょっと様子を見に来た。


今日は外来も休みだ。


時間は16時を過ぎたところで、みんなお昼寝から起きてくる頃ってところかな。


朝と違ってこの時間は割とみんな寝起きがいいから医師や看護師が起こしに行くこともないみたい。


ということで雑談の相手は絶賛仕事中のこの人。



渡「季節の変わり目って不安定になる子多いからさ。今年は寒暖差が激しいから特に、かな。まあ食堂は一時閉鎖してるし、インフルはワクチン打ってるから大丈夫だと思いたい。毎日こっちと小児科行ったり来たりでほんと体力持たない、俺の方が体調崩しそう……最悪インク切れた……はぁ、結局昨日も帰れなかったし、朝の検温だけでビクビクするようになったわ」


岩「翔太、大丈夫？」


渡「何が？」


岩「…いや、疲れてるかなーって」



コンタクトは疲れてしまうのか、黒縁の眼鏡をかけながら手元の書類に淡々とサインしていく翔太。


子供たちには聞かせたくないな、ってくらいのイライラした口調。

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