愛の音を奏でた王子は今。[男主]

37.腹筋太鼓 ページ38

｢……。｣

あのレッスンの日から数日。滝沢歌舞伎ZEROの稽古が始まってから、滝沢くんは稽古中ずっと、頭を捻らせていた。
演出家としては初めての滝沢歌舞伎だから、悩むことが多いのかなぁ……。

ずっと悩んでいて、さすがに空気感を感じとったのか今日は特に稽古場の空気が休憩中も少しピリピリしてる。
……とりあえず、水買いに行こ。



水を買いに戻ると椿くんに、滝沢くんが呼んでます、と伝えられた。

｢音瀬、ちょっといい？｣
｢なんでしょう……？｣
｢腹筋太鼓なんだけど。｣

滝沢くんは、ちょっと挑戦してみないか、と言った。今日、ちょうど腹筋太鼓の日だったから外されるとかじゃなくてほっとした。

｢琴、なんだけど出来たりしない？｣
｢……わかりました。｣

そもそも、俺が入所した理由が琴。
元々琴は祖母が師範で、俺も祖母から習っていた。
どこの縁なのか知らないが、ジャニーさんが演奏会で弾いている俺を見つけてどこの教室か聞きつけ、うちに電話してきた。
こっちに来てからも練習はしているし、合間見つけて名古屋に戻って教室でレッスンを受けていたり、祖母がこっちに来た時には稽古をつけてもらっている。

他の人より遅いけど、お免状もきちんと持ってる。事務所には言ってないけど。

｢……音源だけ貰ってもいいですか。｣
｢分かった。用意しておく。とりあえず、今日の稽古は見学な。｣

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