脚本家になってください (ページ20)

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ⅩⅦ.in the Study ページ20

｢ここからここまでが未完成の遺作だから、好きなの選んで。｣

次の日、花柳はJourneyCompanyを訪れていた。

昨日の花柳の提案を、滝沢は『それでもいい』と受け入れ

｢早いうちがいいだろう｣

と、翌日の午前中に訪れることを約束したのだった。

稽古場のある建物の一室、かつて喜多川氏が使っていた"書斎"と呼ばれたその部屋には壁一面に本棚があり、その中には現主宰の滝沢の名前を冠した舞台の台本や資料もあった。

案内された範囲の紙を、彼女は手に取ってパラパラとめくりながら読んではしまっていく。

｢今から稽古場覗いてくるから、椅子とか机とか自由に使っていいから。｣
｢ありがとうございます。｣

滝沢の声に1度視線をあげた後、また遺作に目を戻しペラペラとめくりつつ、途中で手を止め机の上に置く、棚に戻す。

そんな様子を続けること2時間。

彼女の重ねた台本は3冊。

[滝沢歌舞伎][少年たち][DreamBoys]
と背表紙には名前がつけられていた。

どれもこのカンパニーではSnow ManやSixTONESがアンサンブルの頃から大事にされてきた、歴史のある舞台。

特に、滝沢歌舞伎は前年までは滝沢自身が主演を張って引っ張ってきた舞台である。

集中していたからこそ、気づかなかったのだ。

この部屋に、劇団員が立ち入っていたことを。