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蛸壺の中で同じ体制を取り続けるのは案外疲れるものであった。時折足音が近づいたら声を挙げてみたりするものの、気づいてもらえなかった。次第に体力も尽き、疲れ果ててウトウトとしていた伊作の頭上に影がかかる。まさか、ようやく誰かが通りかかり僕に気づいたのだろうか。･･･助けてもらえるだろうと期待を込めながら半分ぼんやりとした頭でほんの少しだけ首を上に向けると、同じ井桁模様の制服を着た忍たまがこちらを覗き込んでいる。
「元気？」
彼からなされた質問に、思わず全身に張っていた力と気が抜けてしまった。その直後、顔が真っ赤になるのが自分でもハッキリとわかった。
―――なんだそれ。僕は今朝からここにいて、はやくここから抜け出して授業を受けたかったのに、だというのに抜け出せなくて、手段がなくて、ようやくキミがここに来て助けてもらえないだろうかと聞こうとしたのに。そこは大丈夫かどうかを尋ねるべきではないのか。
(今思い返せば、なんとも自分本位な苛立ちだった。きっと、ようやく他人が自分を見つけれくれたことの安心感から、今まで必死にこらえてたものが色々と溢れ出したのだろう。)
こちらを頭上から覗き込む彼は、実際に何度か見かけたことがある。数回程度ではあるが、喋ったこともある。確か、名前は尾張春吉。
髪は黒っぽい髪色。･･･毛先が少し青っぽくも見える。毛先が少々傷んだり、寝癖があるものの一括りにすることで誤魔化している。そのまま視線をつい、と下げ彼の腕を見る。右腕には僕と同じ制服の井桁模様があり、そこにはほんの少量の血が滲んでいるようだ。
―――思わずはっとした
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作者名：うみ | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/74022984
作成日時：2021年9月22日 12時
