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お地蔵様を後にし、どうして皆先に帰ってしまったのだろう、誰か一緒にいてくれたっていいじゃないか。どうして･･･などとしばらくもやもやした気持ちで二刻ほど歩きつづけた。すると、いつの間にかいつもの忍術学園の門前に辿り着いた。
―――とりあえず悩んでいても仕方ない。忍術学園に帰ってきたのだ。とりあえず先生にはぐれてしまったこと謝って、みんなが帰ってきているかをお尋ねして、それから。
ギィと、扉の開かれる音により思考に耽っていた意識が現実に引き戻される。
「あれ、見たことない子だ。 もしかして編入生？」
そこには見たことのない、しかし胸元に"事務員"と貼り付けられ忍び装束を着た人が入門票を片手にこちらの様子を伺っていた。
入門票にサインをするときは、大抵吉野先生がいらっしゃっると思っていたために、ほんの少し警戒してしまう。しかし、彼の柔和で優し気な雰囲気に、ほんの少しの安心感を覚え、ついつい毒気を抜かれてしまった。
しかし、果たして誰だろうか。いや、一年生のうちに学校外で実習したり、ましてや外出なんてしている暇もないほどに忙しかったのだ。もしかしたら僕の知らない学園の関係者方なのだろうと結論づけた。なれば自己紹介が必要だろうか。
「一年は組の尾張春吉です。よろしくお願いします」
「はるよしくんね、初めまして！ 僕は事務員の小松田秀作です」
お互いに挨拶をすませ、事務員―――基、小松田さんから入門票と筆を受け取りサインをする。サインをする傍ら、僕は気になっていたことを尋ねることにした。
「…もしかして、一年生のみんな、先に到着していますか？」
「うん。 一年生のみんなは、さっきピクニックから帰ってきたところだよ」
「そうなんですね」
そこで、ふと自分の他に記入されている名前を読み取る。そこには、"ろ組 中在家" の記入がなされていた。どうやら小松田さんの言う通り先に到着していたようで、やはり僕の到着の方が遅かったことの証左となった。
そうしてサインを済ませ、入門票と筆を小松田さんに返却する。
「･･･はい。確かにサイン受け取りました。 部屋の場所はわかる？」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
とにもかくにも、同級生らが先に帰っているのなら安心だ。なれば、まずは職員室へと向かい事情を話すべきだろう。小松田さんに軽く会釈し、足早に職員室を目指す。職員室はこの先の角を―――。
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作者名：うみ | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/74022984
作成日時：2021年9月22日 12時
