【降谷 零】TIME OUTSIDE SERVICE 2【名探偵コナン】

Episode59.COLEUS ページ9

降谷零はAの待っている自室に帰る前に、水瀬雪と風見裕也の部屋によっていた。
仕事の打ち合わせと状況報告だ。

今回の仕事は、向かいの一軒家に住む夫婦の接触。
この夫婦は公安が追っている宗教団体に加入している夫婦だ。
最近、引っ越しをしてきて日中は家の中で、夜遅くにアジトへ行って何かをしている。
その何か、を探るべく、水瀬と風見は夫婦役として近づくことになっていた。

「明日、接近してみます。女の方は毎日、早朝のスーパーへ買い出しに行っていて間違いありません」

風見が今日の報告を行う。

「じゃあ、明日からよろしく頼んだぞ」
「はい」

水瀬と風見が声を揃えて頷いた。
風見の携帯が鳴り、ベランダに出て行った。
降谷零が帰ろうと玄関へ行こうとすると水瀬が止める。

「あの子のことがそんなに大事？」
「なんだ急に」
「何も知らない、何も出来ないような一般の子よ」

降谷零が廊下にもたれかかりはぁ、とため息をついた。

「どうして？私でいいじゃない…前みたいに、零の都合良い女で構わないのに」

水瀬雪と降谷零はAと出会う前、付き合う訳ではなく、ただ都合のいい時間を埋め合う仲だった。
その時を思い出す降谷零。

「…Aじゃないとダメなんだよ」

降谷零はそう呟き、靴を履く。
それを阻止するように水瀬雪は後ろから降谷零を抱きしめる。

「零…死なないで。私、怖いわ」
「死なないよ」

離してくれ、と言い出て行った降谷零。
水瀬雪が華奢な体を震わせながら涙を流す。

「水瀬、降谷さんを信じろ。その降谷さんが選んだAさんも信じてあげろ」
「無理よ…だって私、零が…」

その先は言葉にならず、虚しく水瀬雪の中で積もって行く。
言えない感情が心に詰め込み、もうキャパオーバーだ。

「零…」

名前を呼ぶだけで幸せだったのに、今は自分だけの零すらいない。
全部、零を独り占めしている彼女が憎くて悔しくて、羨ましくてどうしようもなかった。

先程、少し抱きしめたい降谷零の温かさがまだその手には残っている。
その手で自分を包み、まるで降谷零に抱かれているような、そんな虚しい想いを水瀬雪は大事に自分の中に閉じ込めた。








COLEUS／コリウス(かなわぬ恋に涙する彼女)

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