Episode92.HYDRANGEA ページ42
久しぶりに零君の家に帰ってきた。
ハロちゃんが出迎えてくれて、すぐに餌を追加し水を代える。
「ハロちゃん、零君もういないんだって」
ハロちゃんはよくわかっていない様子で首を傾げた。
その姿でまた涙が溢れる。
「零君にもう一生、会えないんだよ」
涙を零しながら、ハロちゃんを抱きしめた。
ハロちゃんは悲しそうに鼻を鳴らす。
少しの間、泣いてから引き出しを開け、通帳を確認する。
「すごい金額…」
今まで彼の給料や金銭に口出しをしたことはなかったが、いざ見てみると贅沢な生活をしていない彼の通帳には当分働かなくても暮らせるお金があった。
「…ありがとう零君」
ただ甘えるわけにはいかないので、その通帳は引き出しにもう一度閉まった。
彼の洋服の棚を開け彼のよく着ていたニットを手に取り、顔を埋める。
「零君の匂い…」
どうしても零君の匂いで、その場に座り込み、その洋服に顔を押し込めてまた泣いた。
どれだけ泣いてもどうにもならないことがあることを痛感する。
私はその後、両親に電話をした。
彼が殉職したこと、自分の子どもを産みたいこと。
ただ、立ち直る時間が必要なこと。
「とりあえず、会社には休職届を出そうと思うの」
「そうね、Aちゃんがしたいようにすればいいと思うわよ。とりあえず、お父さんと明後日くらいにはそっちに行けると思うから、気をしっかり持たなきゃだめよ」
お母さんのその言葉が余計に涙を誘った。
どう考えても、良い方向にはならないし、立ち直れる姿を考えられない。
電話を切り、その場に倒れこんで涙を流し続けた。
「もう、どうでもいい…」
そのまま眠気が襲って来て、どうせならこのままあなたの元へ行けたら良いのに、そう思いながら意識を手放した。
次の日、会社に休職届を提出した。
会社はすんなり受け入れてくれて、いつでも戻って来て良いと言ってくれて有り難い。
それでも、もう正直どうでもいい。
働く理由が見つからない。
すぐに家に帰って、そのままベッドに倒れこんで眠った。
でもすぐに起きて、ハロちゃんの散歩をして無理に栄養を摂ってそれからまたすぐに眠る。
そんな生活を続けた。
HYDRANGEA/アジサイ(無情)
Episode93.EDELWEISE→←Episode91.ALLIUM
459人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋魔法ちゃん(プロフ) - red cherryさん» ありがとうございます。次作も必ず、面白い作品となるよう善処致します! (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます(^ ^)何度も読み返したい、と思ってくださる作品を創り上げられたことを大変うれしく思います。 (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
red cherry(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品とても好きでした!次作もおもしろそうなので楽しみです (2019年1月7日 23時) (レス) id: 99383d6c30 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までハラハラドキドキで。結末もえぇ、生きてたん?!みたいに驚かずを得ませんでした笑本当に最高でした!何回も読み返しますねw (2019年1月7日 2時) (レス) id: 11877b3e5f (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - キリさん» コメントありがとうございます(^ ^)長らくご愛読いただき、本当にありがとうございます。コメントのお言葉が本当に嬉しくて嬉しくて、とても励みになります(*´-`)これからも贔屓によろしくお願いします。 (2019年1月6日 23時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:恋魔法ちゃん | 作成日時:2018年12月3日 22時