検索窓
今日:16 hit、昨日:14 hit、合計:172,846 hit

Episode91.ALLIUM ページ41

車の中、何度も何度も彼の遺書を読み返して、私は手をつねってみた。
強く、この悪い夢から醒めて欲しくて…
でもいくらつねっても夢から醒めなくて、胸が苦しいままだ。

「つきました」

風見さんが萌華先輩の家の前でドアを開けてくれた。
水瀬さんが私の手を引き、萌華先輩の家のドアの前まで送ってくれる。

「零君の、遺体は…」
「爆発に巻き込まれたから遺体確認ができなかったの。肉片から彼のDNAが確認できたのよ」
「そんな…」

水瀬さんが帰り、インターホンを押すと萌華先輩がいつも通りの笑顔で迎えてくれた。

「おっかえりー!Aちゃん?気分悪い?」

涙が溢れた。
何故か止まらなくて、どうすればいいのか、未来が真っ暗で

「うぅ…やだ…やだぁあ…れ、いくん…うわぁああ」

子どもみたいに泣き叫んだ。
萌華先輩が何かを察して、私を抱きしめた。

「…赤ちゃんが悲しむよ」

萌華先輩がそう言った。
その夜は泣きながら、萌華先輩の手を握り締めながら、泣き疲れて眠りにつく。
その日、零君の夢を見た。


「A、いつも寂しい思いをさせてすまない」
「いいんですよ、零君を愛してますから」

あるカフェの一席。
彼はコーヒーを口にした。
零君は優しく笑ってこう言った。

「僕もAを愛してるよ」

彼との何気ない会話が、日常が私にとってどれ程大切で愛おしいか。




「夢…」

朝日が差して、私は目を覚ました。

「萌華先輩、今日、仕事休みます」
「それがいいよ。ゆっくりしときな」

萌華先輩には安室透が亡くなったという風に伝えた。
水瀬さんもそう言え、と言っていたから。

「一回、家に帰ります。少し1人になって考えてみます。今日までありがとうございました」
「全然。いつでもおいでね。合鍵、ポストに入れておいてくれればいいからね」

萌華先輩を仕事に見送り、萌華先輩の家を掃除した。
でも何故か、涙が溢れて止まらない。

「ママになれるかなぁ…」

お腹に手を添えて、その子に問いかけた。
小さな命がたしかにここにある。
でも何故か、彼の代わりに貴方が来たんじゃないかと思ってしまう。

「零君…」

どれだけ貴方の名前を呼んでも、もう貴方は振り返ってくれない。
もう、何処にもいない。
思い出すのはいい思い出ばかりで、また子どもみたいに泣いてしまった。








ALLIUM/アリウム(深い悲しみ)

Episode92.HYDRANGEA→←Episode90.TATARIAN ASTER



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (176 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
459人がお気に入り
設定タグ:降谷零 , 安室透 , 名探偵コナン   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

恋魔法ちゃん(プロフ) - red cherryさん» ありがとうございます。次作も必ず、面白い作品となるよう善処致します! (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます(^ ^)何度も読み返したい、と思ってくださる作品を創り上げられたことを大変うれしく思います。 (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
red cherry(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品とても好きでした!次作もおもしろそうなので楽しみです (2019年1月7日 23時) (レス) id: 99383d6c30 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までハラハラドキドキで。結末もえぇ、生きてたん?!みたいに驚かずを得ませんでした笑本当に最高でした!何回も読み返しますねw (2019年1月7日 2時) (レス) id: 11877b3e5f (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - キリさん» コメントありがとうございます(^ ^)長らくご愛読いただき、本当にありがとうございます。コメントのお言葉が本当に嬉しくて嬉しくて、とても励みになります(*´-`)これからも贔屓によろしくお願いします。 (2019年1月6日 23時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:恋魔法ちゃん | 作成日時:2018年12月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。