Episode86.LARGE FLOWERD BARRENWORT ページ36
両親と別れ、タクシーで家に帰っている時、彼は珍しくウトウトしていた。
「零君、ありがとうございました」
「いいご両親だね」
「…零君に会わせられるなんて夢みたいでした」
私がそう言うと、肩に重みを感じた。
彼が規則正しい寝息をたてながら私の肩で眠っている。
「仲がいいねぇ」
タクシーの運転手さんが微笑んでそう言った。
零君にとっては、すごく疲れる場面だったと思う。
彼をそのまま寝かせて、アパートに着いた時彼を優しく起こす。
「零君、起きてください。着きましたよ」
「ん…あぁ…おりるよ」
なんだかまだまだ眠そうな零君だけど、外の冷たい空気を浴びて覚醒したようだ。
その時、彼の携帯から電話が鳴った。
零君は少し険しい顔をして電話を切り、私に向き合う。
「明日から仕事でしばらくの間、帰れないんだ」
「…零君、命にかかわるような仕事をハーゲンダッツだとして、そこそこ危ない仕事をピノだとして、平常通りがアイスの実だとします。レベルはどれくらいですか?」
その問いに零君は少し笑った。
「嘘はつかないで。私は零君をどう待てばいいのかが決めれるから」
「…ハーゲンダッツかな」
零君はそう言って私の頭を撫でて家に戻ろう、と手を引いた。
命に関わるような仕事。
どうして彼にばかりそんな仕事があるんだろう。
どうか、神のご加護がありますように。
♢
今日は珍しく零君はお風呂に上がったらすぐにベッドに潜り込んで私を腕の中に閉じ込めた。
「今日はこのまま寝るよ」
「珍しいですね」
少しキスをして、また他愛のない話をして、またキスをして、それを繰り返した。
なんだか嫌な感じもしたのは事実。
零君がこんなに甘えさせてくれるのは滅多にない。
「A…」
そう呟いて私の唇にかぶりついて、それから全身もかぶりつかれた。
まるで飢えている狼のように。
でも、優しくて、落としたら割れてしまうガラスを持つように優しく丁寧に私を抱いた。
「んっ…零君、痕は…」
「薄くつけるよ」
首元や脇腹、太もも、そこら中に彼の印が刻まれた。
ここまで付き合って来て、キスマークをつけられるのは初めてだ。
どうして零君。
どうしていつも通りじゃないの?
そんなに危ない仕事なの?
なんだか深読みをしてしまって涙が溢れた。
その夜は、強く強く離さないように手を繋ぎあって眠った。
LARGE FLOWERD BARRENWORT/イカリソウ(君を離さない)
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恋魔法ちゃん(プロフ) - red cherryさん» ありがとうございます。次作も必ず、面白い作品となるよう善処致します! (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます(^ ^)何度も読み返したい、と思ってくださる作品を創り上げられたことを大変うれしく思います。 (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
red cherry(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品とても好きでした!次作もおもしろそうなので楽しみです (2019年1月7日 23時) (レス) id: 99383d6c30 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までハラハラドキドキで。結末もえぇ、生きてたん?!みたいに驚かずを得ませんでした笑本当に最高でした!何回も読み返しますねw (2019年1月7日 2時) (レス) id: 11877b3e5f (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - キリさん» コメントありがとうございます(^ ^)長らくご愛読いただき、本当にありがとうございます。コメントのお言葉が本当に嬉しくて嬉しくて、とても励みになります(*´-`)これからも贔屓によろしくお願いします。 (2019年1月6日 23時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋魔法ちゃん | 作成日時:2018年12月3日 22時