Episode73.IVY ページ23
「彼の仕事を許してあげてほしいの」
水瀬さんは時間を確認したのか、携帯の電源を入れた。
「許すも何も私は…」
「怖いんでしょう?彼の仕事」
その言葉が心に刺さった。
「好きな人が零の仕事をしてるなんて私も嫌だもの。貴女はもっと辛いと思うわ」
でも、と話を続けながら水瀬さんは席を立ち、入り口の方に手を挙げる。
私はその方を見ると、スーツ姿の彼が立っていた。
零君が近づき、水瀬さんにどういうつもりだ、と聴いた。
私も水瀬さんの方を見ると、彼女はため息をついて
「零もAさんも私にお互いの様子聞いてきてもう面倒なの。2人のことなんだから2人で解決してくれるかしら」
あまりの出来事に頭がパニックだ。
もう少しちゃんとお化粧をすればよかった、とか、リップ塗り直したい、とかの感情が渦巻いた。
零君は、はぁ、とため息をついて水瀬さんが座っていた席に座り、ハイボールを頼んだ。
「久しぶり」
零君が他人行儀に笑って私を見た。
「久しぶりです」
COSDOCで出逢ったぐらいで、私達はそれぞれの違う時間を生きた。
でもいざ、貴方が私の時間に入って来るとそれは特別な時間になる。
居酒屋は他の人の笑い声、話し声が煩くて、でも零君が前にいるから全然気にならない。
ハイボールがきて乾杯をする。
胸が高鳴った。
何を話そう、何を言おう。
「料理、ありがとう。美味しかったよ」
退院して、彼が少しでも楽に食べられるよう作った料理。
食べてくれて嬉しい。
私は首を振り、お口にあってよかったです、と笑うと零君はポケットに手を突っ込み何かを取り出した。
思えば、私達は居酒屋なんか来ない。
いつもホテルか零君のお家か、レストランかバーでの食事。
それは彼が、中々デートができない私へのお返しだと言っていた。
だから居酒屋なんて来たことがない。
「A」
周りはこんなにも煩いのに、何故か零君の声が鮮明に耳に入ってきた。
「結婚しよう」
そう言って、少し汚い机に小さな箱を置いた。
何を言われたのか正直、耳を疑う。
「零君?」
「今すぐはできない。でも、必ず幸せにする。それまで僕は死なない」
目の前がぼやけて、涙が溢れ出て視界が鮮明になって、またぼやけてを繰り返した。
彼は箱のリボンを解いて、二つ折りのケースを開け、私に見せる。
「これはそれまでの約束でAが持っていてくれないかな」
ダイヤがキラキラと輝いて、私を見上げていた。
IVY/アイビー(永遠の愛)
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恋魔法ちゃん(プロフ) - red cherryさん» ありがとうございます。次作も必ず、面白い作品となるよう善処致します! (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます(^ ^)何度も読み返したい、と思ってくださる作品を創り上げられたことを大変うれしく思います。 (2019年1月12日 14時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
red cherry(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品とても好きでした!次作もおもしろそうなので楽しみです (2019年1月7日 23時) (レス) id: 99383d6c30 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後までハラハラドキドキで。結末もえぇ、生きてたん?!みたいに驚かずを得ませんでした笑本当に最高でした!何回も読み返しますねw (2019年1月7日 2時) (レス) id: 11877b3e5f (このIDを非表示/違反報告)
恋魔法ちゃん(プロフ) - キリさん» コメントありがとうございます(^ ^)長らくご愛読いただき、本当にありがとうございます。コメントのお言葉が本当に嬉しくて嬉しくて、とても励みになります(*´-`)これからも贔屓によろしくお願いします。 (2019年1月6日 23時) (レス) id: f14e05799e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋魔法ちゃん | 作成日時:2018年12月3日 22時