【降谷 零】TIME OUTSIDE SERVICE【名探偵コナン】

Episode05.WHO IS HERO ページ5

30分後、沖矢さんが外に出て男性がいないことを確認してくれ、車で送ってもらった。

「本当にありがとうございました」

見ず知らずの私にここまでしてくれて、彼は優しい人なんだと疑わない。

「いえ。それじゃあ、おやすみなさい」

頭を下げて自分の部屋に帰り、戸締りを確認する。
1人が私は嫌い。自室でも先ほどあったことを思い出し、身震いがした。
その時、スマホから着信音がして画面を見ると確かに“安室 透”と表示されている。

「もしもしっ」

食い気味で電話に出ると、もしもし、と言う彼の声が聞こえた。
震えが止まり、鼻頭が痛くなってその痛さと共に視界がぼやける。

「電話に出れなくて悪かった」

少し安室さんの声からは焦りが聞こえた。
電話をほぼかけることのない私が電話をかけてきたんだ。
何かあったのかと言われ、急いでかけてくれたのが伝わる。

「いえ。たまには声が聞きたくて」

震えた声で嘘をついた。
彼を心配させたくなくて、彼がもう既に心配してくれていることが嬉しくて
それだけで充分だ。
それに、言ったところで彼はきてくれない。

「A、泣いてるのか？」
「泣いてませんよ。安室さん、元気ですか？」
「…ああ」

露骨に元気じゃなさそうな声だが少しの間、彼と普通の話をした。
今日、お昼に作ったお弁当のことや仕事のこと。
普通の恋人みたいで幸せだった。

「それじゃあ、おやすみなさい」

5分、それが私と彼の今日の時間。
短いけれど電話をしたのは本当にレアだ。
ゲームでいうラッキーアイテムをゲットした時の気分。




「沖矢さん…」

次の日の仕事が終わり会社を出ると、沖矢さんが待っていた。

「本当にポアロに近いんですね」

昨日、沖矢さんに職場がポアロのすぐ近くだと言ったのを思い出す。
ただ何故彼がここにいるかは分からなかった。

「心配なのできてみたら、彼もいるみたいです」

沖矢さんが指を指すと、昨日の男性がいた。
するとその男性がこちらにやって来て急にナイフを振りかざした。

「えっ…」

何が起こったのか分からなかった。
振り下ろしたナイフが私の頰を掠れた後、全身が恐怖で重くなる。
沖矢さんが私の前に立ち男性からナイフを奪う。

周りの通行人から悲鳴が上がる。
沖矢さんは柔道経験者と昨日話していたことも思い出す。
男性があっという間に制圧された。

また私の前にいるのは彼じゃなく、沖矢さんだ。







WHO IS HERO(私のヒーロは誰)

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