【降谷 零】TIME OUTSIDE SERVICE【名探偵コナン】

Episode02.STAY FOOLISH ページ2

「今日はありがとうございました」

彼の愛車であるRX-7のセンタークラスターの時計表示を見ると23時を回っていた。
マンションの前で車を止め、車のドアを開けようとする私の手を安室さんは掴み、
私が安室さんの方に振り向くと唇が重なった。
私はその行為を受け入れ目を閉じ、後は彼に任せる。

朝からずっと、安室さんとこうしたかった。
ただ、時間なんて気にせずに唇を重ねて、安室さんが此処にいることを必死に確かめる。
私の頰に安室さんの手が触れて、まるで逃さないように固定された。

そんなことをしなくても、逃げないのに。
車内に響くのは角度を変える度に彼がわざと鳴らすリップ音。

「んっ…安室さん…待って」

息が続かなくて、彼のペースが速すぎてそれに私は追いつけず呼吸を整える時間を
貰うために彼の胸を両手で押す。
でもその力は到底及ばず、彼はただ一言。

「待たない」
「え、んんっ…ッ」

息継ぎの時間なんてなくて私は徐々に頭がクラクラしてくる。
きっと酸欠なんだろうけど、まるで酔っている感覚に襲われた。
彼はお酒を飲んでいないのに彼の息も口から侵入してくる彼の唾液も甘くて。
嗚呼、私酔ってるんだ…彼というお酒に。

「安室さん…泊まっていきませんか？」

やっと唇が解放され、息を整えそう言った。
安室さんと離れたくないから。

「珍しいですね。Aから誘うなんて」

彼は私とのキスに呼吸一つ乱れていない。
頭に手を置き、髪を撫でてくれた。

「そうしたいのは山々なんですけど、明日クライアントからメールが来てたので
朝早いんですよ。なので、今日は帰ります」
「…わかりました」

仕事なら仕方ない。
キスしたのはそっちからなのに、お預けなんてズルい気もするけど
彼の手のひらに転がされるのも悪くないと思う。
素直に、おやすみなさいと笑顔を作り彼の帰りを見送った。

自分の部屋に戻り、浴槽に浸かる。
1日の出来事が走馬灯のように流れ幸せの時間を思い出す。
スマホを取り出し、彼との数少ないやりとりを見る。
恋人なら些細なことでも連絡をし合ったり、写真を撮ったりするんだろうけど
私はそれがない。

安室さんは写真を撮ろうとしてくれない。
写真はあまり好きじゃないと言われてから、断れるのが嫌で言うのをやめたのを思い出す。
なんとも言えない感情を浴槽に顔を埋めてうやむやにした。







STAY FOOLISH(愚か者であれ)

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